国の登録を受けずに、高配当をうたう関連会社の社債購入を勧誘したとして、警視庁は15日、金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで、資産運用コンサルティング会社「ザ・グランシールド」(東京都中央区)社長の中村佳敬容疑者(46)=江東区=ら男女8人を逮捕したと発表した。2017年2月以降、全国36都府県の約1300人から約80億円を集めたとみられる。

◆「年利20%の高配当」「5年満期の元本保証」

逮捕前の4月16日、債権者集会の会場から足早に立ち去る中村佳敬容疑者

 逮捕された8人は、中村佳敬容疑者の他にいずれも「ザ・グランシールド」元社員でファイナンシャルプランナーの秋元宙美(38)、佐武敬子(35)、鍵井チエ(34)、池田博文(35)と、信用保証会社「トラステール」(千代田区)社長高橋章(61)、同社役員鈴木成樹(71)、法人役員竹井和徳(64)の各容疑者。8人の逮捕は14日付。  逮捕容疑では共謀の上、国の登録を受けずに20年4月~23年1月、「年利20%の高配当」「5年満期の元本保証」などをうたい、トラステールの社債計1億3000万円分の購入を首都圏などの出資者16人に勧誘し、買わせたとされる。警視庁生活経済課は認否を明らかにしていない。  ◇  ◇

◆「家族の将来のために」と6000万円分を購入

 「信頼していたのにだまされた。絶対に許せない」。トラステール社の社債購入で被害に遭った関東地方の男性医師(55)は東京新聞の取材に、中村佳敬容疑者(46)への憤りをにじませた。

「中村容疑者にだまされた」と憤る男性

 男性は、中村容疑者が製薬会社の営業マンだった25年前に知り合った。その後、大手生命保険会社の営業担当に転職した中村容疑者から勧められ、生命保険に加入した。2022年夏、グランシールドの社長に就いていた中村容疑者から久しぶりに連絡を受け会うと、「資産を増やしませんか」と持ちかけられた。ちょうど満期だった保険を解約し、「家族の将来のために」とトラステール社債など約6000万円分を購入した。  だが、最初の配当が予定されていた23年春になっても口座には振り込まれず、中村容疑者はメールで「もう少し待ってほしい」と繰り返すばかり。その後、音信は途絶えた。  男性は資産の9割を失い、子どもの大学進学費用も消えた。自身も妻も別の仕事を増やして休日も働くが、過度のストレスで不眠や不整脈を発症し、薬が欠かせない。社債購入を相談しなかったため妻との信頼関係も崩れたといい、「今は後悔しかない」と声を震わせた。(小倉貞俊)  ◇  ◇

◆「大手損害保険の支援があり破綻しない」

 警視庁生活経済課によると、グランシールドの社員らは勧誘の際、トラステールを「金融機関から融資を受ける医療機関の債務保証をしており、得た保証料を配当金に充てる」「大手損害保険の支援があり破綻しない」などと紹介。だがこうした事業実態はなかったとみられる。社債の売り上げの2割はグランシールドに還流され、一部が中村容疑者や社員らへの報酬になっていた。  昨年2月以降、出資者への配当金の支払いが遅延。出資者らが警視庁に相談したことなどで、一連の経緯が発覚した。同課は詐欺容疑での立件も視野に全容解明を進めている。  グランシールドを巡っては、運営する歯科医院で「歯科矯正のモニターになれば実質無料で治療が受けられる」とうたい、毎月一定額の報酬を患者に払う事業もしていたが、患者への支払いが停止。昨年1月には損害賠償訴訟を起こされ、現在は破産手続き中。 

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