田植えの時期を迎えて水をたたえた水田が広がる岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で、井戸などの「水位低下」が相次いでいる。リニア中央新幹線の地下トンネル工事が影響したとみられ、枯渇した井戸もある。「今後どうなるのか」。地域には不安が広がっている。

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 旧中山道そばにある「天王様の井戸」は地域のシンボル的存在で、300年以上の歴史があると言われる。ただ、井戸の水は枯渇しており、底がみえる状態だ。

 ちょうど田植えの時期を迎えており、井戸の近くには水田が広がる。近くに暮らす80代の男性は「田んぼも今は農業用水から水を引いてこられているが、この井戸枯れを見ると、今後、大丈夫なのかと心配になる。水田がダメになったら、もう集落としてやっていけなくなるんじゃないか」。

 農家の男性も「心配なのは今後」と話す。

 JR東海によると、トンネル工事は現在は住民が暮らす地域の手前まで進み、今後、地域の地下へと掘り進めることになる。

 男性の田んぼでは、田植えは無事終えたが、今後は田んぼの水を抜いて、また水をためてという作業が続く。「今は大丈夫でも今後、ちゃんと水が確保できるのかという心配はある」

市長「恒久的対策を考えていただきたい」

 「最近、水が少なくなったという話は周囲でよく聞く」という女性(85)は「家の下の方から工事の音なのか『ドーン』という音がすることもあるので、今後、どんな影響が出るかは心配」と漏らす。

 大湫町区長会の纐纈富久会長(67)は1月に地域近くで進む工事の見学会に参加した。「工事現場で水が流れているのを見て、これは大湫からの水じゃないかとは思っていた」。生活への影響はただちには無いというが、「JRにはとにかく原因を究明してしっかり対策してほしい」と話す。

 瑞浪市では水位低下の報告をJR東海から受け、県と対応を協議しているという。水野光二市長は「地元住民は工事の進捗(しんちょく)により拡大する井戸枯れ等の事態に、大変心配している。至急、今回の事態の原因を分析して、恒久的対策を考えていただきたい」などとするコメントを出し、JR側に対策を求めている。(寺西哲生)

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