川崎市の家庭の水槽で見つかった「モトスマリモ」(国立科学博物館提供)=共同

国内発見が民家の水槽からの2例のみというミステリアスな藻類「モトスマリモ」の情報を国立科学博物館(科博)が求めている。北海道・阿寒湖の「マリモ」、富山の「タテヤママリモ」に続く国内3種目のマリモで、発見場所は甲府市と川崎市の家庭の水槽。在来種か外来種かはおろか生息域も不明で、研究者は「展開の予測が付かず面白い」と心を躍らせる。

マリモ類は藻の仲間で、水の揺れで転がり、糸状のものが丸い形になる。

モトスマリモの国内初確認は2022年。甲府市の男性が魚を飼っていた水槽に「16年ごろからマリモに似た藻類が発生している」と科博に連絡があった。辻彰洋研究主幹(57)が遺伝子解析すると、北海道釧路市の阿寒湖と、富山県立山町の人工池で発生した従来の2種とは違い、中国やオランダで報告されているものと同じ種だと判明した。

男性はタナゴを飼育していた水槽に産卵場所として、山梨県内の本栖湖で採った二枚貝を入れていた。辻さんはマリモが貝に付着していたと推定、地名にちなんでモトスマリモと命名した。

科博によると、モトスマリモは最大5センチ程度。他種と比べて軽く、水槽のエアポンプによる泡でも水中で回転して球体を保つことができる。また、暑さに強いため、厳密に管理されず水温が上がりやすい家庭の水槽でも安定的に増えるという。

国立科学博物館の辻研究主幹。右は研究室の水槽で育てている「モトスマリモ」(4月、茨城県つくば市)=共同

辻さんは本栖湖を含む富士五湖に分布していると考え、潜水調査をしたが、自然界ではほぐれて糸状になっている可能性もあり、発見できなかった。

調査が再び動いたのは24年1月。川崎市の男性から「水槽にマリモのようなものがいる」との情報が飛び込んだ。男性によると、3年ほど前、熱帯魚を飼育する水槽に多摩川で拾った石を入れたところ、石が藻のようなもので覆われていき、10個以上の球体に増えたという。

解析の結果、甲府市のものとは遺伝的に異なるが同じ種に属すると確認された。多摩川で拾った石に付着していたとみられ、モトスマリモが広く分布している可能性も出てきた。

辻さんは今、各地から寄せられた情報を慎重に検討している最中だ。今後は多摩川での調査も進め、謎の解明に挑む。「全く別の地域の水槽で見つかるか、自然界で専門家に発見されるか」。研究室で育てているモトスマリモを前に、笑みを浮かべた。〔共同〕

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