ロシアのプーチン大統領が7日、モスクワのクレムリンで就任式に臨み、通算5期目の任期に入った。永続化する「プーチン帝国」の野望を阻むため、日米欧などの民主主義諸国はこれまで以上に結束を強める必要がある。
2000年に大統領となったプーチン氏は、20年に自ら改憲を提案し、2期12年の任期延長に道を開いた。2036年まで現職にとどまることが可能で、終身の国家元首の座もうかがう。
改憲後初の24年3月の大統領選は自由でも公正でもなく、正統性が疑問視された。多くの米欧諸国や日本がウクライナ侵略に抗議して就任式を欠席したのも当然だ。
民主化に背を向けたプーチン氏は専制君主のような権力者に転じ、ソ連より前の伝統的な帝政への回帰を強めている。危ういナショナリズムをあおり、米欧との対決やウクライナ侵略を歴史的使命だとみなす重大な誤りを犯した。
「ともに勝利しよう!」。プーチン氏は7日の就任演説をこう締めくくった。侵略と米欧に対する「勝利」を諦めないロシアが、今後も多くの世界的リスクをもたらすことは明らかだ。
差し迫った脅威はロシア軍によるウクライナでの占領地の拡大だ。プーチン氏はロシア帝国の領土だったウクライナの多くをロシアの歴史的な土地だとみなす。
民主主義陣営はやや劣勢に立つウクライナへの支援の手を緩めず、力による現状変更を試みるロシアを必ず敗北させなければならない。勝利を許せば、東アジアで台湾統一に向けた中国の動きにも影響を及ぼしかねない。
ウクライナ侵略の先には、ロシアと米欧の直接の軍事衝突が起きるリスクがある。ロシアは就任式の直前、非戦略核戦力の軍事演習を近く始めると発表した。危険な挑発と脅しはやめるべきだ。核戦争という最悪の事態は何としても避けなければならない。
ロシアは同じ旧帝国で権威主義の中国やイランなどと対米欧で共闘を強め、世界の分断を試みている。プーチン氏は就任後初の外遊先に中国を選ぶ見通しだ。ともに「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国に触手を伸ばす。
帝国の自壊も想定しておくべきだ。プーチン氏は今年、72歳になる。いずれ健康不安が浮上したり、ウクライナで敗れたりすれば、権力闘争が始まるだろう。核大国の混乱への警戒は欠かせない。
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