石油メジャー5社の純利益は天然ガスの供給懸念が後退したことで減少=ロイター

【ヒューストン=花房良祐、ロンドン=湯前宗太郎】欧米石油メジャー5社の2024年1〜3月期の純利益は前年同期比約3割減の計約290億ドル(約4兆5000億円)となった。欧米やアジアの天然ガス価格が低下し、石油・ガス開発部門の収益が悪化した。22年にロシアがウクライナを侵略した直後に供給不安へ陥ったガス市場が、危機モードから脱しつつあることが背景にある。

7日発表した24年1〜3月期の英BPの純利益は、前年同期比72%減の22億6300万ドルだった。米エクソンモービルは28%減の82億2000万ドル、米シェブロンが16%減の55億100万ドル、英シェルが16%減の73億5800万ドルだった。大手5社では仏トタルエナジーズだけが増益を確保し、3%増の57億2100万ドルだった。

シェルのシネイド・ゴーマン最高財務責任者(CFO)は「市場環境は好ましいものではなかった」と話す。欧米の暖冬がガス需要を押し下げた。国際エネルギー機関(IEA)によると、23年末から24年初めの家庭・商業用のガス需要は米国で前年同期比8%減、欧州で2%下落した。

ロシアのウクライナ侵略を受け、パイプラインによる欧州向けのロシア産ガスの供給が減少し、22年はガス価格が高騰した。一方、欧州各国はガス貯蔵量と液化天然ガス(LNG)輸入を増やして「脱ロシア」対策を進め、ガス価格は一時より大幅に下落。欧州のパイプラインガスとアジアのLNGのスポット価格は24年1〜3月、ウクライナ危機前の水準に低下した。

加えて、米国のガス生産が好調で米国の価格指標は歴史的な水準に低迷。エクソンのガス販売の平均価格は前年同期と比べ3割下落した。

原油相場は北海ブレント価格が1〜3月、1バレル80ドル台で推移。中国の景気減速懸念が台頭した前年同期をやや上回ったものの、ガス価格低下の影響が原油収入の増加分を打ち消した。

大手5社の24年1〜3月期の純利益の合計は、ウクライナ侵略直後で過去最高を記録した22年4〜6月期に比べて半減した。ただ、新型コロナウイルス禍前の3年間(17〜19年)の四半期平均と比べると約2倍にのぼる。24年4〜6月期は300億ドルを超える見通しで、高い水準は今後も続きそうだ。

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