7日、モスクワのクレムリンで5期目就任の宣誓を前に歩くロシアのプーチン大統領(ロシア大統領府提供)=ロイター・共同

ロシアのプーチン大統領は7日の大統領就任式で宣誓し、通算5期目となる長期政権に入った。最長で2036年までとなる「終身大統領」も視野に入れる。3年目に入ったウクライナ侵略を継続する方針を示し、戦時下の経済体制を維持するため政権基盤を一段と強めようとしている。

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現在71歳のプーチン氏の任期は30年までとなる。さらに続投すれば83歳まで権力の椅子に座り続けることも可能となる。

プーチン氏は政権基盤を盤石にするため憲法改正を繰り返した。大統領任期を08年の憲法改正で4年から6年に延長し、20年の改憲では大統領任期を通算2期と定めた。従来の任期は適用外とし、24年3月の大統領選に出馬できるようになった。

長びくウクライナ侵略により、軍需産業が足元のロシア経済をけん引している。

23年の国内総生産(GDP、速報値)は22年に比べて3.6%増加し、2年ぶりのプラス成長となった。ミシュスチン首相は4月の下院で、戦車や装甲車といった戦闘用車両の生産が「3倍になった」と発言した。

プーチン氏は4月、24年のGDP成長率についても「3%以上増加する可能性がある」とプラス成長が続くとの見方を示した。国際通貨基金(IMF)は同月16日に公表した経済見通しで、ロシアの24年成長率を3.2%に上方修正していた。

大統領任期の30年を視野に入れるプーチン氏は、2月末の年次教書演説でインフラ投資やハイテク産業の育成、少子化対策などといった実質的な選挙公約を打ち出した。

ロシア通信の試算によると、政策の実現に必要な予算は約17兆ルーブルに上る。24年のロシアの予算歳入(約35兆ルーブル)の半分に匹敵する。

長期化するウクライナ侵略の戦費負担に加え、国民の支持をつなぎとめるバラマキ的な支援策の拡大で財源の確保が課題となる。

ロシアの民間世論調査会社レバダセンターの調査では、プーチン氏の3月の支持率は87%とウクライナ侵略後で最高となった。高い支持率を背景に、政権が国民の支持を得にくい政策を導入する環境は整っている。

ロシアの独立系メディアは3月、プーチン政権が個人所得税の最高税率を現在の15%から20%に引き上げる可能性があると報じた。年収が500万ルーブルを超える層が対象という。高所得層からの税収を増やし、歳出増を賄うとみられる。

ロシアは石油やガス輸出による税収が歳入の柱で、石油・ガス収入は3割超を占める。

足元では中国などアジアへの輸出シフトを進めているもよう。ロシア財務省が発表した24年1〜3月の石油・ガス収入は前年同期比79%増と大幅増だった。米国など西側諸国は金融制裁を強めており、継続できるかどうかは不透明だ。

プーチン政権は過去にも新たな任期の開始直後に不人気政策を断行した実績がある。4期目に入った18年には、年金受給開始年齢を段階的に引き上げる年金改革を実施した。ロシア各地で抗議行動が広がり、拘束者が相次ぐ事態となった。

政権と敵対するなどした人物は次々と姿を消した。ウクライナ侵略を巡って23年6月に武装蜂起した民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は同年8月に搭乗していた小型機が墜落し死亡した。

反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は24年2月に北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で死亡した。政権はいずれも関与を否定している。

プーチン氏は00年に前任のエリツィン氏から後継指名を受けて大統領に初当選した。2期大統領を務めた後、08〜12年は首相としてメドベージェフ大統領とタンデム(2人1組)体制で政権を運営した。

3期目に入った後の14年にウクライナのクリミア半島を一方的に併合し、同国東部の親ロ派住民の保護などを名目にウクライナへの介入を強めていった。

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