アメリカでは連邦政府の当面の資金を確保する新たなつなぎ予算案が、20日に議会下院で、21日未明に議会上院でそれぞれ採決され、共和党と民主党の議員による賛成多数で可決されました。

予算案には、ハリケーンの被害を受けた地域などに1000億ドル以上の支援を行うことなどが盛り込まれていて、この案に賛成する意向を示しているバイデン大統領の署名をへて成立する見通しです。

これによって懸念されていた政府機関の一部閉鎖は回避されることになりました。

つなぎ予算案をめぐっては当初、議員給与の引き上げが含まれていましたが、実業家のイーロン・マスク氏が反対したことなどを受けて削除されていて、マスク氏の影響力が議会にも広がっていることを示す形になりました。

マスク氏ら反対表明がきっかけ 議会大きく動く

アメリカで予算案をめぐって議会が大きく動いたのは、トランプ次期政権で政府支出の削減を図る組織を率いることになった実業家のマスク氏と起業家のラマスワミ氏の反対表明がきっかけでした。

議会下院の共和党と民主党の指導部は今月17日に1500ページ以上に及ぶつなぎ予算案を取りまとめ、それまでの予算の期限となっている20日までの成立を目指すことで合意していました。

しかし、このつなぎ予算案に議員給与の引き上げなどが含まれていることをラマスワミ氏が問題視し、マスク氏も「この案を可決すべきでない」とXに投稿。

マスク氏はその後もXで「この法案に賛成する議員は2年後の選挙で落選に値する」、「この法案を止めるために議員の事務所に電話してください」などと、反対の意向を繰り返し表明しました。

そしてトランプ次期大統領も反対する考えを投稿したことで共和党と民主党の合意は破棄され、21日未明、大きく簡素化された予算案が可決されました。

アメリカでは政府の予算案をめぐって民主党と共和党が対立するのはいわば“恒例行事”で、過去には政府機関の一部が実際に閉鎖されるケースもありましたが、マスク氏らの投稿をきっかけにSNS上で批判が高まり、両党の合意が破棄される事態となったのは極めて異例のことです。

この経緯について、政治専門サイトの「ポリティコ」は、「マスク氏は“投稿の嵐”によって議会の取り引きを頓挫させた。世界でこれまで全く見たことのない新しい形の統治だ」と指摘しています。

またABCテレビは「世界最大のコミュニケーションのプラットフォームを持つマスク氏が政治的な活動を活発化させている。その組み合わせがどれほど強力かを初めて目の当たりにした」と報じています。

一方でニューヨークタイムズは、マスク氏のフォロワーはトランプ次期大統領の2倍以上の2億人余りに上ることを紹介したうえで、「マスク氏の投稿をうけて議員たちの事務所には電話が殺到した。議員ではないマスク氏が議会の運営にあまりに大きな影響力を及ぼしていることに議員たちは憤慨している」と伝えました。

マスク氏とラマスワミ氏は、トランプ次期政権で政府支出の削減を図る組織を率いることになっています。

2人は連邦政府の職員でなく外部のボランティアとして働くとしていますが、改革の柱と位置づける歳出の大幅なカットや連邦政府の大規模な人員削減についてもSNSを駆使して進めていく可能性があり、今後の影響力を懸念する見方も出ています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。