シリアでは今月8日、半世紀以上続いた独裁的なアサド政権が崩壊し、反政府勢力を率いた「シリア解放機構」のもとで暫定政権が発足しました。
シリア情勢をめぐっては、アメリカのブリンケン国務長官が反政府勢力を支援してきた隣国トルコを訪れるなど、各国の動きが活発になっていますが、国連でシリア問題を担当するペデルセン特使の報道官は13日の会見で「いくつかの側面で当座の安定に向けた進展はあったが、状況は依然としてとても流動的だ」と述べ、暫定政権の行方を注視する必要があるとの認識を示しました。
一方で、暫定政権を主導するシリア解放機構のジャウラニ指導者は13日、SNSに投稿されたビデオ声明で「革命の勝利を祝福するため外に出よう。そして、この国の建設に取りかかろう」と述べ、国民に結束を呼びかけました。
シリア解放機構は国連などからテロ組織に指定されていますが、今回のビデオ声明でジャウラニ指導者は、軍服のような服装ではなく白いシャツを着ていて、従来のイメージや国内外の不安を払拭するねらいもありそうです。
アサド政権の崩壊後 初めての休日 首都では多くの人が集まり喜ぶ
半世紀以上続いたアサド政権が崩壊したシリアでは、13日は政権が崩壊してから初めての休日で、イスラム教の金曜礼拝が各地で行われました。
このうち首都ダマスカスでは、旧市街の中にあるモスクの付近や中心部の広場に多くの人が集まり、喜びをあらわにしていました。
反政府勢力が支配してきた北西部のイドリブからダマスカスに来たという男性は、広場でインタビューに応じ「今ここにいられることがとても幸せです。全員が一つになり、国を一から再建しようと、すべてのシリア人に呼びかけたいです」と話していました。
また、北部のアレッポの中心部でも多くの人が集まり、踊るなどして喜ぶ様子が見られました。
イスラエル 占領したシリア側の山頂に駐留続ける準備を軍に指示
イスラエルのカッツ国防相は13日、声明を発表し、アサド政権の崩壊後にイスラエル軍が占領したシリア側のヘルモン山の山頂に、冬の間、駐留を続ける準備をするよう、軍に指示したことを明らかにしました。
声明でカッツ国防相は「シリアで起きていることを考慮すると、ヘルモン山の山頂にとどまることは、安全保障上、極めて重要な意味がある」としています。
またカッツ国防相は、ネタニヤフ首相とともに双眼鏡でヘルモン山の山頂を眺める写真もSNSのXに投稿し「51年ぶりにイスラエルの支配下に戻ったシリアのヘルモン山の山頂を見渡した。刺激的で歴史的な瞬間だ」と書き込みました。
標高2800メートル余りのヘルモン山はシリア側を見渡せる軍事的要衝で、1973年の第4次中東戦争ではイスラエルとシリアが領有権をめぐって激しい戦闘を繰り広げました。
イスラエル軍によるシリアとの緩衝地帯への部隊の展開をめぐって、イスラエル政府はイスラム過激派から国を守るための一時的な措置だとしています。
これに対し、国連のグテーレス事務総長は12日に声明を発表し、イスラエル軍の行動について「シリアの主権と領土に対する広範囲に及ぶ侵害だ」として深い懸念を示したうえで、緩衝地帯からの撤退を求めるなど、批判も強まっています。
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