横田基地で行われた発足式には、アメリカ・インド太平洋宇宙軍のトップ、マスタリール司令官や航空自衛隊幹部などおよそ200人が出席しました。

マスタリール司令官 “脅威に対し日本と連携して対応”

この中で演説したマスタリール司令官は「北朝鮮やロシアといった継続的な脅威に加え、中国は違法で威圧的、そして攻撃的な戦術を用いてインド太平洋地域の安定を脅かしている」と述べ、強い警戒感を示しました。

そのうえで「日米同盟はかつてないほど強固で、いまや宇宙においても、平和と安定を守る準備ができている」と述べ、この地域の脅威に対し日本と連携して対応していくと強調しました。

アメリカ軍によりますと、4日発足した在日アメリカ宇宙軍は数十人規模で構成されます。

航空自衛隊で宇宙空間を専門的に扱う部隊と連携しながらミサイル発射を繰り返す北朝鮮や宇宙空間での活動を活発化させる中国などに対応するため、宇宙空間の監視やミサイル発射情報の共有化を進めていくとしています。

ラートン司令官 “日米同盟にとって歴史的な瞬間”

演説した在日アメリカ宇宙軍のトップ、ラートン司令官は日米の部隊連携の強化のために進められている在日アメリカ軍の再編に触れ、「在日アメリカ軍の再編が目前に迫っているいま、宇宙軍の発足が同時に進むことは日米同盟にとって歴史的な瞬間だ」と述べ、意義を強調しました。

防衛省・自衛隊も対応強化

宇宙をめぐっては防衛省・自衛隊も対応を強化しています。

航空自衛隊には2020年、宇宙空間を専門的に扱う初めての部隊が発足しました。

人工衛星がほかの衛星や物体と衝突して機能不全に陥ったり、宇宙ゴミが発生したりするのを防ぐため、レーダーなどを使って24時間態勢で宇宙空間の監視を行っているほか他国の衛星の運用状況などを把握する任務を行っています。

2025年度には部隊の名称を「宇宙作戦団」とし、人員をおよそ670人に増やします。

防衛省は今後、人工衛星に対する電波妨害などへの対応を強化するとともに、他国の衛星の情報通信を妨げる能力を構築するなどとしています。

また、防衛省は来年度予算案の概算要求で、複数の人工衛星を連携させて情報を収集するシステム「衛星コンステレーション」を構築する費用を初めて盛り込み、3232億円を計上しました。

このシステムでは、複数の衛星を使って同一地点を高頻度で撮影することで、弾道ミサイルの発射の兆候を把握したり、他国の艦船などを探知・追尾したりすることを目指すということです。

2025年度以降、段階的に複数の衛星が、打ち上げられ、2027年度までに本格的な運用を目指しているということです。

打ち上げる衛星の数について防衛省は「情報収集能力が明らかになるため答えられない」としています。

アメリカ軍との連携進む

防衛省・自衛隊は、宇宙空間にある人工衛星や物体について、位置や軌道などに関する情報をアメリカ軍と互いに共有するなど連携を進めています。

2020年からは宇宙空間に関して各国との連絡や情報共有を行うアメリカ軍の調整所に自衛官1人を派遣しています。調整所はアメリカ・カリフォルニア州にあり、イギリスやフランス、ドイツの各軍などからも要員が派遣されていて、各国との連携を深めています。

アメリカ軍が行う机上演習

2016年からはアメリカ軍が行う宇宙空間の監視などに関する机上演習にも参加していて、宇宙空間にある物体の探知や追跡を協力して行う際の要領などを学んでいます。

2023年1月に行われた日米の外務・防衛の閣僚協議では宇宙空間での攻撃は同盟の安全に対する明確な挑戦だとして、一定の場合にはアメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約の第5条の適用の対象になりうることを確認しています。

今回、在日アメリカ宇宙軍が新編されたことについて、防衛省は「日本国内にアメリカ側のカウンターパートができることで、時差などもなく、相談や議論がしやすくなりより円滑なコミュニケーションが期待できる。日米同盟の抑止力・対処力の強化に資する」としています。防衛省によりますと、現時点で在日アメリカ宇宙軍の新編によって、新たなレーダーや施設などの設置は予定されていないということです。

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