景気敏感銘柄が市場をけん引し、S&P500は11月に6%上昇した=ロイター

【ニューヨーク=佐藤璃子】29日の米株式市場でS&P500種株価指数は反発し、前営業日の27日に比べ0.6%高の6032.38となった。トランプ米次期政権の政策への期待から月間では6%高。2023年11月以来、1年ぶりの月間上昇率を記録した。景気後退懸念は一段と弱まり、金融や一般消費財などの景気敏感銘柄を中心に買われた。

5日投開票の米大統領選でトランプ前大統領の返り咲きが決まった。同氏が掲げる減税や規制緩和といった政策への期待から相場上昇に弾みがつき、米主要3指数(米ダウ工業株30種平均、ナスダック総合株価指数、S&P500)は大統領選後にそれぞれ最高値を更新。29日は米長期金利の低下を追い風にS&P500が6000台を回復し、最高値を付けた。

減税や規制緩和の恩恵を受ける銘柄の上昇が目立った。S&P500の業種別指数では「金融」が月間で10%上昇した。トランプ次期政権で、金融機関同士のM&A(合併・買収)のハードルが下がり、銀行規制についても緩まるとの期待があった。

クレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズが23%高となった。2月に発表のあった、米銀キャピタル・ワン・ファイナンシャルによる買収案件で、規制当局の認可が下りるかが焦点となっていた。大手投資銀ゴールドマン・サックスも18%高と上昇した。

トランプ氏の当選で米経済に対する楽観的な見方が増えたことで、消費関連の銘柄にも買いが広がった。高級ブランド「コーチ」などを傘下に持つタペストリーが31%高、旅行予約サイトのエクスペディアが18%高となった。業種別指数「一般消費財」は13%高で、上昇率は11業種中で最も大きかった。

米景気・相場の先行きについてはポジティブな見方が多い。専門家からは「経済は引き続き成長を維持すると見られる。S&P500は24年末にかけてさらに高値を更新するだろう」(米調査会社CFRAのサム・ストーバル氏)との声があがる。

トランプ氏が掲げた政策により負の影響が見込まれる銘柄は相場全体に出遅れた。業種別指数の「素材」は一部銘柄で関税引き上げの影響も懸念され、月間で1%高にとどまった。「ヘルスケア」はほぼ横ばいだった。次期政権の厚生長官に指名されたロバート・ケネディ・ジュニア氏はワクチンに懐疑的な立場をとる。

トランプ氏が掲げる関税引き上げ政策が輸入物価の上昇を招き、高インフレを再燃させる可能性が指摘されている。12月17〜18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、目先は11日発表の消費者物価指数(CPI)などの物価指標に注目が集まる。

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