イスラエルがレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの停戦に応じた。1年超の交戦を止める合意だ。双方は着実に履行すべきだ。パレスチナ自治区ガザから中東に広がった危機を収束する機にしなければならない。
停戦は60日間。双方がレバノン南部から撤収し、レバノン軍が展開して監視役を担うという。
ヒズボラは弱体化したとはいえ武装している。イスラエルは違反があれば攻撃すると主張した。仲介した米仏はじめ国際社会は停戦維持の努力を惜しむべきでない。
ヒズボラは昨年10月にイスラエルと戦闘を始めたガザのイスラム組織ハマスに呼応し、越境攻撃を重ねてきた。イスラエル軍は今年10月、レバノンへの地上侵攻開始を表明した。ヒズボラは通信機器の一斉爆発でかく乱され、空爆で指導者ナスララ師らを失った。
交戦でレバノンでは3500人以上が死亡し、100万人以上が避難生活を送る。イスラエルでは北部の住民6万人が避難を強いられている。民間人の犠牲を食い止め、速やかに元の生活を取り戻す必要がある。
ガザからレバノンに飛び火した戦闘は中東の混迷を深め、ヒズボラの後ろ盾イランとイスラエルとの交戦にもつながった。レバノンの停戦をガザの戦闘終結につなげるべきだとの期待がある。
今回の調停はバイデン米政権が主導したが、再登板を決めたトランプ前大統領も停戦に賛同したと報じられた。同氏の復帰を歓迎するイスラエルが、意をくんで矛を収めたとの見方も成り立つ。
ただ中東全体の安定は見通せない。イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスを孤立させる」と説明した。ヒズボラとハマスを切り離したうえでガザ攻撃に集中するつもりなら、鎮静化は遠い。
同氏にはガザでの戦闘を巡り、国際刑事裁判所（ICC）が戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで逮捕状を出したばかりだ。国際社会の警告として重く受け止め、戦闘を終わらせなければならない。
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