【ワシントン=芦塚智子】トランプ次期米大統領に対する2件の刑事事件を捜査してきたスミス特別検察官は25日、両事件の起訴の取り下げを連邦裁判所に申し立てた。現職大統領の起訴を控える司法省の指針を理由とした。トランプ氏の大統領退任後に再び起訴を可能にする余地を残した。
起訴を取り下げるのは、2021年に起きた連邦議会占拠事件に関与した罪と、政府の機密文書を不正に持ち出した罪の2件。いずれも公判は始まっていない。判事が近く申し立て通り起訴を却下するかどうかを判断する。
トランプ氏はSNSへの投稿で「これらの事件は、私が強制された他の事件と同様に中身がなく違法で、決して提起されるべきではなかった」と主張した。
次期政権でホワイトハウスの広報部長に就くチャン氏は声明で「今日の司法省の決定は、トランプ大統領に対する憲法違反の連邦刑事事件を終結させるもので、法の支配にとっての重要な勝利だ」と強調した。
トランプ氏は23年8月、議会占拠事件に関与し、敗北した20年大統領選の結果を覆すため連邦議会の承認手続きを妨害しようとしたとして4つの罪状で起訴された。
スミス氏はこの起訴について首都ワシントンの連邦地裁に起訴の取り下げを申し立てた。申立書でスミス氏は「合衆国憲法は現職大統領の刑事起訴を禁じているというのが司法省の長年の見解だ」と説明し、トランプ氏の就任前に起訴は却下されなくてはならないとした。
起訴内容そのものには自信があるとの立場を示し、裁判所に「(将来の)起訴の権利を害することなく」起訴を却下するよう要請した。判事がこれを認めた場合、2029年1月にトランプ氏が退任した後に再び起訴することが可能になる。
機密文書を巡る起訴についても、同じ理由で南部ジョージア州の連邦控訴裁に控訴の取り下げを申し立てた。
トランプ氏は21年1月の大統領退任後も機密文書を不適切に所持・管理した疑いがあった。連邦捜査局(FBI)は22年8月に南部フロリダ州の邸宅を捜索し、「最高機密」に分類された文書などを押収した。連邦大陪審が23年6月にトランプ氏を起訴した。
トランプ氏が他に抱える東部ニューヨーク州と南部ジョージア州での刑事裁判も手続きが延期になっており、大統領選での勝利を受けてトランプ氏の刑事裁判は収束に向けた追い風が吹いている。
トランプ氏が有罪評決を受けた不倫口止め料を巡る裁判は、ニューヨーク州の裁判所が22日に量刑言い渡しの無期延期を決めた。起訴や有罪評決を取り下げるかも審理する。
20年大統領選でジョージア州の結果を覆そうとした同州法違反の罪で起訴された裁判は、口頭弁論が無期限で延期され開始のメドが立っていない。
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