国連が定めた「世界子どもの日」の20日、ユニセフは最新の「世界子供白書」を発表し、2050年代に18歳未満の子どもたちが置かれる環境についてユニセフとして初めてとなる予測を示しました。

この中で、気候変動問題が顕在化し「気候危機」とも言われる状況がさらに広がることで、より多くの子どもたちが極端な危険にさらされるとしています。

具体的には、2000年代と比較して、熱波にさらされる子どもの数は8倍に、洪水にさらされる子どもの数は3.1倍に増えるほか、干ばつや台風などの脅威に直面する子どもも増加するとしています。

また、AI=人工知能をはじめとした最先端の技術の発展により、子どもたちはさまざまな恩恵を受ける一方、デジタル空間で性的搾取や虐待などのリスクにさらされる危険性が増えるなどと指摘しています。

そのうえで、こうしたことへの対策として、各国政府などに対し、気候変動に対応したインフラの整備や再生可能エネルギーへの投資のほか、子どもたちのデジタルスキルの向上や最先端技術を使った犯罪に対処するための法整備などに取り組むよう求めています。

世界子供白書 “人口の高齢化の影響も”

ユニセフが発表した最新の「世界子供白書」は、先進国を中心に進む人口の高齢化の影響についても触れています。

それによりますと、2050年代には、18歳以下の子どもの数は23億人と現在とほぼ変わらない一方、成人の数は増え続けて75億人に達すると予測しています。

また、2050年代までに、世界の子どもたちの3分の1以上がインドや中国、それにナイジェリアやパキスタンの4か国に集中するとしています。

このうち、インドでは子どもの数が今より減るものの、3億5000万人と世界で最も多くなる見通しです。

一方、日本や西ヨーロッパなどでは6人に1人程度しか子どもがいなくなるということです。

このほか、都市部に住む子どもの数は、2000年代の9億7100万人よりも33%多い13億人に達し、世界の子どもたちの60%近くを占めると予測されていて、子どものニーズにあった都市計画などが必要になると指摘しています。

専門家“各国が気候変動対策を”

「世界子供白書」を取りまとめたユニセフ・イノチェンティ研究所のボー・ヴィクター・ニールンド所長はNHKのインタビューに対し、2050年代には気候変動の影響を受ける子どもが大幅に増えるという予測について「もし何もしなければ、熱波や洪水などは増えるだろうが、私たちには選択肢があり、人類としてよりよい選択ができる。各国の政府指導者は予測ほど悪くならないよう措置を講じることができる」と述べ、各国が気候変動対策に取り組む必要性を強調しました。

日本については、洪水や台風が増えると予測しているとしたうえで「政府が考慮する必要があるのは気候危機にどのように備え、対応できるようにするかだ。また、人々が自分や家族を守る方法をもっと知っているようにする必要がある」と述べ、子どもたちの安全を守るための対策を進めることが必要だという認識を示しました。

また、日本では少子高齢化がさらに進み、人口に占める子どもの割合が少なくなるものの、児童福祉のサービスなどを維持し子どもにやさしい社会にしていくことが重要だと指摘しました。

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