太平洋の島国ソロモン諸島の議会(定数50)は2日、親中派のソガバレ前首相が後継とした、マネレ前外務・貿易相を新たな首相に指名した。安全保障や経済の面で中国と蜜月な関係を築いた外交路線が続く見通しだ。

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 AP通信によると、マネレ氏は指名後の演説で「国民と国の利益を常に優先させる」と述べた。

 4月の総選挙で選ばれた議員50人のうち、欠席者を除く49人が無記名で投票。マネレ氏が31票、野党側候補のウェール氏は18票だった。

 マネレ氏は前政権で台湾との断交や中国との安全保障協定の締結を推進してきた。米国やオーストラリアは、太平洋で中国海軍が足場を築くことにつながる可能性があるなどとして、繰り返し懸念を示してきた。

 こうした中で行われた総選挙では中国との関係が最大の争点となった。

 与党側は経済、安保、警察分野で中国との協力をさらに強めていくと主張。野党側は親中外交を批判し、米豪や台湾との関係を再構築して中国依存から脱却すべきだと訴えた。ウェール氏は安保協定に懸念を示し、「中国の機嫌を取るために国を売った」などと前政権を非難していた。

 総選挙では与党OUR党が15議席を獲得し、第1党の座を維持。ソガバレ前首相は当初、続投に意欲を示していたが、単独過半数を得られなかった結果を受けて、マネレ氏を後継候補に立てた。野党3党でつくる連合CAREと有力野党・統一党は連立を組み、計20議席を確保していたが、固めきれなかった。

 米中が影響力を競う太平洋島嶼(とうしょ)国の中でも特に「中国寄り」の急先鋒(きゅうせんぽう)だったソガバレ前首相は、先月29日の演説で「米国と西側各国から圧力を受けている」と語り、米豪との対立姿勢をあらわにしていた。外交経験の豊富なマネレ新首相はソガバレ氏に比べればバランスを重視するとみられているものの、基本路線は継承する意向で、米豪にとっては厳しい結果となった。(バンコク=大部俊哉)

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