ロシアのプーチン大統領はドローンの増産に言及した(9月、サンクトペテルブルクの無人機生産施設)=ロイター

ロシア連邦統計局が13日発表した2024年7〜9月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前年同期比3.1%増だった。ウクライナ侵略に伴う軍需などがけん引し、6四半期連続でプラス成長した。

ロシア経済発展省によると、同期間は製造業が6%増となった。軍需関連とみられる化学や金属、自動車などの伸びが続いている。

ウクライナ侵略に伴い、ロシアの軍需産業は工場の稼働率を高めている。プーチン大統領は9月、「軍産複合体の企業は特別軍事作戦に参加する部隊に最新の装備や弾薬を供給するために必要なあらゆることに取り組んでいる」と述べた。24年は特にドローン(無人機)の製造を大幅に増やす方針にも言及した。

戦時経済体制がGDPを押し上げる状況が続く中、国際通貨基金(IMF)は10月、24年通年のロシアの成長率を従来の3.2%から3.6%に上方修正した。

一方、3年近くに及ぶ侵略は人手不足やインフレを招いており、景気の先行きに影を落とす。

ウクライナ東部ドネツク州などで犠牲をいとわない攻勢を続けるロシア軍は、志願兵である契約軍人の採用を急いでいる。メドベージェフ安全保障会議副議長は10月、年間目標の78%の採用を達成したとSNSで言及した。7月時点では年初から19万人が契約したと表明しており、1日あたり1000人程度のペースで増やしているもようだ。

契約軍人の採用増などに伴う人手不足で7〜9月の失業率は2.4%と過去最低水準で推移する。これに加え、米国などによる対ロ制裁や通貨ルーブルの下落、軍需産業などを含む内需の拡大といった複合的な要因でインフレ基調が鮮明になってきた。

9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比8.6%だった。インフレ率は侵略開始後の22年に急上昇し、その後大幅な金融引き締めなどを経て沈静化したが、今年7〜9月は8.9%と四半期ベースで22年10〜12月以来の高水準となった。

食料品の一部などで価格高騰が目立っており、バターの価格は年初から25%超上昇した。ロシアメディアによると一部の小売店では品薄が続いている。人件費のほか物流費の上昇が値上げにつながった。

ウクライナはロシア領内の製油所に無人機による攻撃を強める。国内の燃料価格が上昇したことなどが輸送コストを押し上げている。

航空券などチケット価格も上昇している。エコノミークラスの利用料は年初から1割強上昇したほか、バスや地下鉄といった公共交通機関の利用料金も軒並み値上がりした。

消費はなお旺盛だ。人手不足などを背景に給与引き上げの動きも起きており、実質可処分所得は7〜9月に9.4%増となった。

ロシア中央銀行は「想定を上回るインフレが続いている」として、10月の金融政策決定会合で政策金利を年21%と2%引き上げた。22年2月のウクライナ侵略開始直後の政策金利(20%)を上回る水準だ。

中銀は今後の利上げにも含みを持たせており、引き締めを続ける意向を示す。高水準の政策金利が続けば、過熱感が強まっている景気は減速する可能性がある。

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