欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が消費者を保護する法律に基づき、中国発の格安の越境電子商取引(EC)サービス「Temu(テム)」に対する調査を始めた。Temuなどの利用は日本でも広がっており、法令順守体制の確認を急ぐ必要がある。
欧州委はゲームの要素を取り入れたTemuのスマートフォン向けアプリに依存性があり、模倣品などの排除も不十分と懸念している。調査で法律違反が判明すれば最大で世界売上高の6%に相当する制裁金を科す。
Temuは2022年に中国のPDDホールディングスが始め、幅広い商品を中国から各地に直接配送する事業モデルで急成長した。衣料品を主体とする「SHEIN(シーイン)」とともに日本でも存在感を高めている。
新サービスで市場が活性化することは歓迎すべきだが、課題もある。ひとつは欧州委も問題視している違法な商品の販売だ。日本ではユニクロが23年、SHEINの販売したかばんが自社商品に酷似しているとして、不正競争防止法に基づく訴えを起こした。
商品の安全への懸念も強まっている。韓国ソウル市当局は8月、Temuなどが販売した商品から基準値を大幅に上回る有害物質が検出されたと発表した。
運営会社は消費者の不安を真摯に受け止め、対応を急ぐべきだ。Temuは「ブランド保護センター」を設けて機能を強化しているという。各社は対策にあたる人員や予算を増やし、情報開示を拡充する必要がある。
消費者保護を担う当局の役割も大きい。日本では厚生労働省が中国越境ECで販売されている商品を対象とした有害物質に関する検査を始める。検査結果を踏まえて必要な対策を講じるべきだ。
Temuなどに対し、海外では低価格品を免税対象とする制度を悪用し、人権侵害に加担しているといった批判がでている。消費者も格安の背後にある仕組みを理解したうえで利用する必要がある。
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