目次
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貿易政策・関税は
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エネルギー・環境政策は
貿易政策・関税は
まずは日本の政府と経済界が注目している貿易政策です。
ハリス氏 トランプ氏の関税上乗せに反対
ハリス氏は、同志国・同盟国との関係を重視するバイデン大統領の貿易政策を引き継ぐとみられます。
バイデン、ハリス両氏が正副大統領を務める現政権は、中国に対しては厳しい姿勢を示していて、▽中国製のEVへの関税を引き上げる政策、▽中国向けの半導体の輸出規制を強化する措置などを相次いで打ち出しています。
ただトランプ氏が掲げる関税の上乗せ政策については、アメリカ国内の家計の負担につながるなどとして反対する考えを示しています。
トランプ氏 原則10%~20%の関税
トランプ氏は大統領を務めていた当時、日本は牛肉や豚肉といった農産品の関税の引き下げなど大幅な市場開放を求められ、日米で新たな貿易協定を締結した経緯があります。
今回の選挙戦では生産拠点の国内回帰を重視し、日本を含む外国から輸入される製品に原則10%から20%の関税をかける方針を示しています。
特に自動車については、ことし9月に行った演説でメキシコで生産しアメリカに輸入されるすべての自動車に対して「100%の関税を課す」と述べていて、こうした政策が実現した場合、メキシコに生産拠点を設けている日本の自動車メーカーにも影響が出る可能性があります。
エネルギー・環境政策は
次にエネルギー・環境政策です。アメリカで生産や販売を行う日本企業が多いだけに、その方向性が注目されます。
ハリス氏 クリーンエネルギーへ投資継続
ハリス氏は事実上の公約となる民主党の政策綱領で、クリーンエネルギーの研究開発の投資を継続し、世界をリードできるようにするとしています。
バイデン、ハリス両氏が正副大統領を務める現政権は気候変動を政権の最重要課題に掲げ、▽トランプ前政権が離脱した「パリ協定」への復帰に加え、▽おととし8月にはEV=電気自動車の普及や再生可能エネルギーの推進などに巨額の資金を投じる法律を成立させました。
ことし1月にはLNG=液化天然ガスが環境に及ぼす影響を評価するためとして、LNGを新たに輸出する際の許可を日本を含め一時的に凍結する措置を発表しています。
トランプ氏 化石燃料の増産支援
トランプ氏はエネルギー価格を引き下げるため石油や天然ガスなどの化石燃料の増産を支援し、海外への輸出も増やす考えを示しています。
トランプ氏は「1年以内、遅くとも1年半以内に、エネルギー価格や電力価格を少なくとも半分にするという野心的な目標に取り組む」と表明しています。
また、バイデン政権下でアメリカが復帰した「パリ協定」について、大統領に返り咲けば再び離脱する方針を明確にしています。
アメリカ大統領選挙 特設サイト
EVへの影響も
大統領選挙の結果は、バイデン政権のもとで進められてきたEV=電気自動車の優遇政策にも影響を及ぼす可能性があります。
民主党のバイデン政権は▽2030年までに新車の50%以上をEVや燃料電池車とする大統領令を出しているほか、▽EV購入者への税制優遇を進めるなど普及を後押ししてきました。
後継のハリス氏が勝利した場合、EVを推進してきたバイデン前大統領の政策を引き継ぐ可能性が高いと見込まれます。
これに対し、トランプ氏はバイデン政権によるEV=電気自動車を優遇する政策に批判的な発言を繰り返していて、トランプ氏が勝利した場合、EV推進の政策が継続されるかは不透明です。
ただ、トランプ氏は電気自動車メーカー、テスラのCEOを務める実業家のイーロン・マスク氏との距離を縮めていて、9月には選挙で勝利した場合、政府の委員会のトップにマスク氏を起用することを明らかにしました。
マスク氏もトランプ氏への支持を表明していて2人の関係性がEV政策にどう影響するかも注目されます。
一方、バイデン政権ではEVの優遇政策を受ける条件として、北米地域で電池の部材の製造や組み立てなどを行うよう自動車メーカーに求めていたことから日本メーカーの間でも現地でEVへの大規模投資の動きが加速してきました。
それだけに大統領選挙の結果を受けて、EVの優遇策がどうなるかを注視しています。
また、トランプ氏は生産拠点の国内回帰を重視し、外国から輸入した製品に一律に関税をかける方針を示しています。
特に自動車については、ことし7月の演説の際に中国メーカーがメキシコに自動車工場を建設していると指摘した上で、生産拠点をアメリカ国内に移さなければ100%から200%の関税を課して、アメリカでは販売できないようにすると発言したこともあります。
メキシコには、アメリカへのアクセスの良さや生産コストの低さといったメリットから日本の自動車メーカーが数多く進出していて、アメリカへの輸出拠点にしています。
仮にこうした政策が実現すれば、日本メーカーも戦略の見直しを余儀なくされるだけに神経をとがらせています。
金融市場の動向は
さらにアメリカ大統領選挙の結果は金融市場の動向や日銀の金融政策にも影響するのではないかという見方が出ています。
トランプ前大統領は法人税率の引き下げや所得税の最高税率の引き下げといった減税策について期限を撤廃して恒久的な制度とするほか、日本を含む外国から輸入される製品に原則10%から20%の関税をかける方針です。
一方、民主党のハリス副大統領はインフレ対策に取り組む姿勢を打ち出すとともに、初めて住宅を購入する人に頭金として最大2万5000ドル、日本円にしておよそ360万円を支給することを明らかにしています。
市場関係者の間からは次のような指摘が多くなっています。
「トランプ前大統領が新たな大統領に就任した場合、減税による景気の押し上げや関税の上乗せによって輸入品の価格が上がることで物価が再び上昇する可能性がある。一方、民主党のハリス副大統領が就任した場合はこれまでの政権運営をおおむね継続するとみられるが、中間層への支援が物価上昇につながる可能性もある」
アメリカでは記録的な物価上昇が落ち着き、FRB=連邦準備制度理事会も4年半ぶりに利下げに踏み切りましたが、金融市場では「新大統領の経済政策で物価が再び上昇したり高止まりしたりした場合、FRBは今後利下げを進めにくくなり、外国為替市場では金利の高いドルが買われて、円安ドル高が進むのではないか」という見方が出ています。
円相場は日本時間の4日午後5時時点で1ドル=152円台ですが、さらに円安が進むと日本にとっては輸出企業の業績を上向かせる一方、原材料の輸入価格が上昇し、物価が一段と押し上げられることが予想されます。
一方、新しい大統領が保護主義的な動きを強めてアメリカからの輸出に有利なドル安を志向した場合は外国為替市場で円高方向に動きやすくなるという見方もあり、金融市場は新しい大統領の今後の発言や政策の実現可能性などに神経をとがらせる展開になりそうです。
新しい大統領の政策や外国為替市場の動きは日銀の金融政策にも影響しそうです。
日銀は今後、経済・物価の情勢を見ながら利上げを検討する姿勢ですが、例えば新しい大統領の政策によってアメリカの景気が予想以上に過熱し、円安ドル高が急速に進む状況となった場合、国内の物価上昇リスクに対応するため早期の利上げの判断を迫られる可能性もあります。
日銀の植田総裁は先週の金融政策決定会合のあとの会見で、「新しい大統領が打ち出してくる政策次第では新たなリスクが出てくるということは申し上げるまでもない。そこはまた新たなリスクとして点検していきたい」と述べています。
「USスチール」買収計画に影響も
また、大統領選挙の結果は、日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカー「USスチール」の買収計画にも影響を及ぼす要因として注目されています。
この計画に対しては、鉄鋼業界の労働組合、USW=全米鉄鋼労働組合が一貫して反対しています。
選挙戦の激戦州として知られるペンシルベニア州にはUSスチールの本社やUSWの本部があり、労働者層の支持を獲得したいハリス氏、トランプ氏ともこれまで買収計画には厳しい姿勢を示してきました。
ことし1月、トランプ氏は「即座に阻止する」と述べて大統領に再び就任した場合には買収を認めない考えを示し、ハリス氏もことし9月、現地で労働組合の関係者を前にUSスチールについて、「アメリカ国内で所有され、運営される企業であり続けるべきだ」と述べていました。
こうした中、日本製鉄は買収の実現に向けて、審査を進めるアメリカ政府の委員会に計画を再申請していて、委員会の判断が先延ばしになっていました。
ハリス氏、トランプ氏とも買収計画には厳しい姿勢を示してきただけにいずれの候補が勝利しても先行きは不透明で、新たな大統領のもとでの委員会の判断の行方に注目が集まっています。
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