軍事政権下の韓国で、北朝鮮のスパイとして死刑判決を受けた在日韓国人の陳斗鉉(チンドゥヒョン)さん(故人)の裁判をやり直す再審公判で、ソウル高裁は31日、無罪とする判決を言い渡した。1976年の死刑判決の確定から約半世紀。妻は「(裁判所が)いつか汚名をそそいでくれると信じていた」と喜んだ。

 陳さんは在日本大韓民国居留民団(当時、現・在日本大韓民国民団)の幹部だった74年、スパイ容疑で韓国陸軍保安司令部に逮捕。減刑を経て、民主化後の90年に釈放されるまでの16年間を政治犯として獄中で過ごした。

 陳さんは生前、冤罪(えんざい)を主張していたが、2014年に死去。昨年、再審が開始された。この日の判決は、違法な取り調べが行われたなどとして「自白には任意性がない」と結論づけた。

 東京から駆けつけた妻の朴三順(パクサムスン)さん(92)は「家族がどんなに苦しんで50年を過ごしたか。商売もろくに出来ず、夜も眠れなかった。これで終止符を打ってもらいたい」と語った。

 一連の事件では、17人が有罪判決を受けた。この日は懲役10年の判決を受け、獄中で死亡した別の韓国人男性にも無罪が言い渡された。(ソウル=太田成美)

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