【ニューヨーク=野一色遥花】22日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が下落し、一時1ドル=151円20銭と7月31日以来およそ3か月ぶりの円安水準を付けた。米景気が底堅く、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが緩やかになるとの見方が根強い。米大統領選で共和党のトランプ前大統領の勝利が米金利上昇とドル高を促すという「トランプ・トレード」の再開を見込む声もある。
22日の円相場は東京市場で1ドル=151円10銭程度まで下落。その後は一進一退となったが、ニューヨーク市場で再び下げ圧力が強まり、151円20銭を付ける場面があった。米債券市場では長期金利の指標になる10年物国債利回りが上昇(価格は下落)し、一時4.2%台と約3カ月ぶりの高さになった。日米金利差の拡大を意識したドル買い・円売りが進んだ。
目立ったドル買い材料はなかったが、米景気の強さと米金利の高止まりを意識したドル買いが出やすい状況が続いている。
国際通貨基金(IMF)が22日に公表した最新の世界経済見通しでは、先進国の2024年の実質成長率の予想で米国を2.8%と7月時点から0.2ポイント上方修正した。日本とユーロ圏は下方修正、カナダは据え置き、英国は上方修正ながら1.1%成長で、「米1強」が改めて鮮明になった。
米金利先物市場では、年内は11月と12月に2回ある米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げはゼロ回ないし1回のみにとどまるとの確率が3割程度に達している。1カ月前に同様の予想は皆無だった。9月に0.5%の大幅利下げに動いたFRBが、今後は0.25%の下げ幅でよりゆっくり動くとの見方が市場で広がりつつある。
他方で欧州中央銀行(ECB)などは継続利下げを進めている。「米国と他の先進国の金利差はかなりの乖離(かいり)が維持されそうで、ドル高が続く要因になる」(米調査会社ヤルデニ・リサーチ)との声がある。
市場関係者からは、米大統領選でのトランプ氏勝利を見越した「トランプ・トレード」の再開との指摘も出ている。大統領選は同氏と民主党のハリス副大統領が各種世論調査で接戦を演じているが、過去にもトランプ氏の事前の支持率が低く出ていた経緯を踏まえ、トランプ氏有利を唱える声もある。
7月ごろにかけて盛り上がったトランプ・トレードは、政策面で恩恵を受ける株式の買いに加え、財政悪化を懸念した米債券売りとドル買いを招くというものだった。オランダ金融大手INGのグローバル市場責任者、クリス・ターナー氏らはリポートで「トランプ政権の関税引き上げなどで高金利環境が続けばドル買い材料となる」と指摘する。
10月27日投開票の日本の衆院選で与党の苦戦が伝わるなか、政治情勢の混迷が日銀の金融政策に影を落とすとの見方もある。日銀は当面追加利上げに動けないと受け止められれば、円売り・ドル買いを促す要因になる。
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