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専門家「台湾封鎖作戦の能力向上がねらい」
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中国国営テレビ 軍事演習の動画を公開 空母も参加
【ニュース7】中国軍 台湾周辺で大規模軍事演習
中国軍で台湾を含む東シナ海などを管轄する東部戦区は14日、台湾をほぼ取り囲むように設定した海域と空域で、大規模な軍事演習を行いました。
軍事演習には陸海空軍とロケット軍などが参加し、主要な港などの封鎖や、海上や地上の標的を攻撃するための訓練を行い、中国海軍の空母「遼寧」も台湾本島の東部沖で演習に参加しました。
また、軍の動きと連携する形で中国海警局も4つの編隊を組み台湾を取り囲むようにパトロールを行い、東部戦区の報道官は日本時間の午後7時に「演習は成功裏に終了した」と発表しました。
この演習について台湾国防部は参加した軍用機は、日本時間の午後5時半までに、戦闘機やヘリコプター、無人機など、一日としてはこれまでで最も多いのべ125機にのぼったと明らかにしました。
さらに、中国軍や海警局の艦船はあわせて34隻が参加したということです。
台湾の頼清徳総統は今月10日の演説で「中華人民共和国は台湾を代表する権利はない。国家の主権を堅持し、侵犯や併合を許さない」などと述べ、これに対し、台湾統一を目指す中国は強く反発していました。
中国外務省の毛寧報道官は14日の記者会見で「『台湾独立』と台湾海峡の平和は相いれないものだ。『台湾独立勢力』の挑発は必ず反撃に遭う」と述べ、「1つの中国」の原則を受け入れない台湾の頼清徳政権を改めて強くけん制しました。
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専門家「台湾封鎖作戦の能力向上がねらい」
今回の軍事演習について、中国の安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の飯田将史理論研究部長は「直接的なきっかけは頼清徳総統の『双十節』の演説にあると思うが、中国側が口実として使っただけだと思う」と述べ、中国は演説の内容に関わらず、軍事演習の準備を進めていた可能性が高いという見方を示しました。
また、空母「遼寧」が参加したり、中国海警局の船が台湾本島を取り囲むように航行するとしたりしていることから、ことし5月の演習と比べ、規模が拡大傾向にあるとして「中国側は演習の目的について重要な港湾や地域に対する封鎖だと明言していて、台湾に対する封鎖作戦の能力向上を図っていることを示唆している」と指摘しました。
さらに「頼政権に対して、これ以上、中国側からみて受け入れられない行動をとらないよう要求し、アメリカにも台湾との安全保障を含めた関係強化を控えるよう求める狙いがある」と述べました。
中国国営テレビ 軍事演習の動画を公開 空母も参加
中国の国営テレビは中国軍が台湾周辺の海域で行うと発表した大規模な軍事演習のものだとする動画を公開しました。
公開された動画には、明け方に多くの兵士が参集し、軍用車両に乗り込んでいく様子や戦闘機や艦艇などが次々と出動していく様子が写っています。
また、ミサイルの発射準備が進められているような場面や、空母から艦載機が飛び立つ場面も確認できます。
中国中央テレビは、陸海空軍とロケット軍などの部隊が予定どおり軍事演習の対象となる海域や空域に展開し、訓練が進められていると伝えています。
一方、演習を実施している東部戦区の報道官は、中国海軍の空母「遼寧」が台湾本島の東部沖で演習に参加していることを明らかにしました。
台湾 頼総統「民主的な台湾と国家の安全を守る」
台湾の頼清徳総統は14日、中国の演習を受けて開いた会議の写真とメッセージをSNSに投稿しました。
この中で「中国軍の動きは全面的に把握している」とした上で「中国の軍事演習は地域の平和と安定を破壊し、周辺の国々を武力で脅迫し続けるもので、国際社会の期待と一致しない」と非難しました。
その上で「台湾の人たちは安心してほしい。民主的な台湾と国家の安全を守る」と強調しました。
台湾国防部「理性のない挑発行為 強く非難」
台湾国防部は「このような理性のない挑発行為に対し、強い非難を表明する」とした上で、台湾軍は強い意志を保ち、防衛力を構築して安全を確保するとしています。
中国軍は、ことし5月に頼総統が就任した直後にも台湾をほぼ取り囲む形で大規模な軍事演習を行っています。
台湾国防部14日の発表「中国軍機のべ25機 台湾周辺空域で活動」
台湾国防部は毎日午前中に台湾周辺における中国軍の活動の状況を発表しています。
14日の発表によりますと、日本時間の13日午前7時から14日午前9時までの間に、中国軍機のべ25機が台湾周辺の空域で活動し、このうちのべ16機が台湾海峡の「中間線」を越え台湾の南西部や東部の空域に進入したということです。
また、中国の軍の艦艇7隻と公船4隻の活動も確認したということで、台湾軍の航空機や艦艇などが監視を行っているとしています。
中国軍SNS上に演習実施範囲の地図を掲載
台湾周辺での大規模な軍事演習について中国軍は、SNS上に実施範囲を示した地図を掲載し「挑発が増せば増すほど締めつけはきつくなる」と強調しています。
地図ではおととし8月とことし5月、そして今回の演習範囲をそれぞれ示していて、3回の演習を重ね合わせると台湾本島の周辺をほぼ隙間無く囲い込んでいることがわかります。中国としては台湾への軍事的な圧力を視覚的にも示すねらいがあるとみられます。
中国海警局も台湾周辺でパトロール
中国海警局は日本時間の14日午前9時に海警局が4つの編隊を組み台湾本島の周辺海域でパトロールを行うと発表しました。
海警局のホームページには4つの編隊が台湾本島の周りを囲うように航行するルートが地図に示され「『1つの中国』の原則に従って台湾を法に基づいてコントロ-ルする実際の行動だ」としています。
一方、台湾の沿岸警備を担当する海巡署は中国海警局の船が13日から台湾海峡の「中間線」を越え、編隊を組んで台湾の北部や南西部、それに東部の海域にとどまっているなどの異常な動きを確認していると14日朝、発表しました。
台湾海巡署は国防部と連携して監視するとともに、付近の海域を航行する船舶や漁船に警戒を呼びかけています。
台湾 沿岸警備 中国海警局の船とする動画を公開
台湾の沿岸警備を担当する海巡署は14日午前、中国海警局の船が4つの編隊を組んで台湾周辺の海域を航行していると発表し、職員が中国海警局の船を監視しているとする画像を公開しました。
また、台湾の離島、馬祖島の沿岸では14日朝、中国海警局の船4隻が台湾当局の設定した接続水域に当たる「制限水域」を航行したということです。
台湾海巡署が公開した動画では、海巡署の船が中国海警局の船に対して、制限水域に無許可で入らないよう呼びかけていて、台湾側は、中国の船を監視し、追い払ったとしています。
台湾 安全保障部門トップ「理念の近い国々と意思疎通」
台湾の安全保障政策の諮問機関のトップを務める、呉※ショウ燮国家安全会議秘書長は報道陣の取材に応じ「中国の演習については、頼総統がすでに安全保障のハイレベル会議を開き、中国の軍事的な脅威に対して明確な指示を出した」と述べ、対応は万全だとして台湾の人々に安心するよう呼びかけました。
また「われわれは理念の近い国々と密接な意思疎通を続けている。台湾に対する支持は疑いのないものだと信じている」と強調しました。
※ショウは「かねへん」に「りっとう」
台北市民からは冷静な声 「心配しても何も変わらない」
中国軍が演習を開始すると発表したあとも、台湾の台北では、鉄道やバスなどの公共交通機関は平常どおり運行していて、市民からは冷静に受け止める声が聞かれました。
通勤途中の50代の男性は「演習について全く知りませんでした。もうかなり慣れてしまい、心配しても何も変わりません」と話していました。
また、60代の女性は「中国が演習をやりたいなら、やればいいと思います。もし、中国が本当に台湾に上陸したら私たちは抵抗するか、何らかの方法で撃退します」と話していました。
中国国営メディア「3つの特徴」専門家の見解伝える
今回の軍事演習について中国の国営メディアは軍のシンクタンクの専門家の見方を伝えています。
このうち、海軍研究院の鄭宏氏はこれまでの演習と比較して3つの特徴があると指摘しています。
1つめはより立体的に兵力を配置し、台湾本島の北部や南西部、それに東部などさまざまな方角から同時に台湾本島に接近しているとしています。
2つめは海域や空域での警戒や主要な港や地域の封鎖、それに制海権や制空権の奪取など演習の項目がより多くなっているとしています。
3つめは今回の演習は夜間に行動を開始して迅速に展開しており、いつでも訓練から戦闘に移行できる実戦能力を十分に示しているとしています。
この点について軍事科学院の付征南氏は中国中央テレビで「今回の演習は早朝、夜間に行動を始めていて、部隊の展開から近距離の射撃までいつでも訓練から実戦に移行できる。『台湾独立分子』が挑発すれば軍はさらに踏み出した行動をとるだろう」と述べています。
また、国営メディアは中国海警局が実施している台湾本島や離島周辺でのパトロールについては、海警局の最大級の船で「モンスター船」とも呼ばれる「海警2901」が初めて台湾周辺での任務に当たっていると伝えています。
さらに台湾の離島、馬祖島では台湾当局が設定している接続水域に当たる「制限水域」に海警局の船が進入したとしています。
海警局の船が馬祖島周辺の「制限水域」に入るのは初めてだとしていて、将来的に活動を常態化させる可能性があると伝えています。
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空母「遼寧」参加 アメリカを強くけん制か
今回の大規模な軍事演習で中国海軍の空母「遼寧」が台湾本島の東部沖に展開していることについて、軍直属の国防大学の専門家は中国中央テレビのインタビューで「空母は重要な海上経路に陣取っており、いわば『頑強な壁』を形成している。外部勢力からの介入や干渉を阻止するとともに内側の『台湾独立勢力』に圧力をかけるものだ」という見方を示しました。
中国軍は、太平洋に面する台湾の東部沖がアメリカなどによる支援ルートを絶つ上で重要だと位置づけており、今回の演習で空母を展開したことには、台湾への武器売却などを含め関与を強めるアメリカを強くけん制するねらいがあるとみられます。
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中国軍 近年大規模な軍事演習繰り返し 台湾に圧力
中国軍は近年、台湾周辺での大規模な軍事演習を繰り返し、台湾への圧力を強めてきました。
【2022年8月4~10日】
2022年8月には、当時のアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことへの対抗措置だとして、中国軍が台湾を取り囲むようにあわせて6か所の海域とその上空で、7日間にわたって軍事演習を行いました。
この演習では、中国軍が発射した弾道ミサイルのうち5発が日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下し、日本政府が中国に抗議しました。
また、ペロシ氏が台湾を訪問して以降、中国は軍用機を台湾海峡の「中間線」を越えて台湾側に飛行させる活動を常態化させるようになりました。
【2023年4月8~10日】
2023年4月には、台湾の蔡英文総統がアメリカでマッカーシー下院議長と会談したことを受けて、中国軍が台湾周辺で3日間、軍事演習を行いました。
この演習には、中国初の国産空母「山東」も参加して空母から艦載機が飛び立つ様子だとする映像なども公開されました。
【2024年5月23~24日】
ことし5月には、台湾の頼清徳総統が就任演説をした3日後に、台湾を取り囲むように設定した海域と複数の台湾の離島周辺で2日間、軍事演習を行いました。
この演習では、太平洋に面した台湾の東側にも複数の爆撃機が展開したほか、中国海警局の艦艇も台湾東部沖の海域で訓練を実施しました。
中国メディアはこの演習について、台北を中心とする台湾北部では民進党当局に打撃を与え、東部ではエネルギー資源の補給や外部からの支援のルートを断つことをねらいとしたものだという専門家の見方を伝えていました。
5月の頼清徳総統の就任直後の軍事演習について中国軍は「連合利剣ー2024A」という名前を付けていましたが、14日に発表した今回の演習は「連合利剣ー2024B」だとしていて、中国が「台湾独立派」とみなす頼総統への圧力を強めるための一連の対応であることをうかがわせています。
ロシア国防省 “太平洋北西部で中国海軍と合同訓練”
ロシア国防省は14日、太平洋の北西部でロシア海軍と中国海軍が合同で、敵の潜水艦やミサイルによる攻撃を撃退する訓練を行ったと発表しました。
訓練には、ロシア側から2隻の艦艇が、中国側からは4隻の艦艇が参加したということですが、訓練を行った期間や今回、中国軍が台湾周辺で行った軍事演習との関係についてはふれられていません。
アメリカ国務省「深刻な懸念を抱いている」
アメリカ国務省のミラー報道官は13日、声明を発表し「アメリカは台湾周辺の海域での中国軍による軍事演習に深刻な懸念を抱いている。年に一度の定例演説に対して中国が軍事的な挑発を行うことに正当な理由はなく、事態が悪化するおそれがある」として、軍事演習が頼総統の演説への反発だという見方を示し、懸念を表明しました。
その上で「われわれは中国に対し、自制とともに、台湾海峡や地域の平和と安定を損なうようなこれ以上の行動を避けるよう求める。それは地域の平和と繁栄にとって不可欠であり、国際的な懸念でもある」としています。
石破首相「対応できる体制 常に整える」
石破総理大臣は自民党本部で記者団に対し「台湾周辺の平和と安全はわが国のみならず地域にとって極めて重要な問題であり、先に中国の李強首相と会った際に厳しく指摘もし、わが国の立場を申し述べた。この地域の状況の変化、推移を注意深く見守り、どういう事態にも対応できるような体制は常に整えていきたい」と述べました。
岩屋外相「今後の動向を注視」
岩屋外務大臣は、自民党本部で記者団に対し「台湾海峡の平和と安定が、アジア全体の平和と安定にとって極めて重要なので、今後の動向をしっかり注視したい」と述べました。
また、外務省によりますと、外交ルートを通じて中国側に懸念を伝達したということです。
中谷防衛相「警戒・監視を続けていく」
中谷防衛大臣は、自民党本部で記者団に対し「重大な関心を持って注視していく。わが国のEEZ=排他的経済水域の中にミサイルが飛んできた事例もあるので、そういう点も含めて、警戒・監視を続けていく」と述べました。
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