【ヒューストン=花房良祐】航空機大手の米ボーイングは11日、全世界の従業員の1割に相当する1万7000人の人員を削減すると発表した。開発中の新大型機「777X」の初号機の納入は1年遅れて2026年とする。1月に起きた機体事故による品質問題で経営が揺らぐなか、米国で起きたストライキが長期化し収束のメドがみえない。資金繰りに加え市場の評価も低下しており、大型の事業見直しに踏み込む。
11日、コスト削減と資金繰りの改善に向けた諸施策を発表した。中型貨物機「767」の生産も中止する。一連の措置は、直接的にはストの影響を受けたものという。
ケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は11日、「短期的な課題に直面するなか、未来のための戦略的な判断をしている。この決断は競争力を長期に保つために必要だ」との声明を公表し、リストラの必要性を訴えた。
「777X」の初号機の新しい納期は旅客機が26年、貨物機が28年を予定する。開発を決定した13年当初は、初号機の納入を20年としていた。開発がさらにずれ込むことになる。767は受注残29機の納入後に生産を中止する。
777Xの開発の遅れと767の生産中止で合計30億ドルの損失を計上する。内訳は777Xの開発遅れで26億ドルの損失、767の生産中止で4億ドルの損失だ。
民間旅客機ビジネスだけでなく、防衛宇宙部門もストや有人宇宙船プロジェクト「スターライナー」の帰還失敗などで開発・生産活動などが振るわない。今回、米軍用の練習機や空中給油機、無人空中給油機、新型宇宙船の生産・開発の遅れで20億ドルの損失を計上すると発表した。
ボーイングは11日、ストの影響を織り込んだ7〜9月期の暫定的な決算実績を公表した。売上高は178億ドル、営業キャッシュフロー(CF)が13億ドルの赤字だったという。期末の手元資金(現金・現金同等物と短期債の合計)は105億ドルとした。
ボーイングは労働組合との交渉がこじれ、約1カ月前から米西部ワシントン州などの組合員3万人以上が大型ストライキに突入した。777Xや767を生産する工場が稼働を停止し、飛行機の納入が滞っている。組合は40%の賃上げと社会保障の充実を求めている。
777Xは三菱重工業など日本企業が2割の比率で機体を製造する。767も同様に日本企業が機体製造の15%を占めている。今回のリストラは日本の航空機産業にも影響する見通しだ。
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