【ニューヨーク=吉田圭織】米南部を相次ぎ襲った大型ハリケーン「ミルトン」や「へリーン」を巡るデマがSNS(交流サイト)で続出している。人工知能(AI)で作成した被災地の偽動画などが拡散しているほか、被災地にまったく政府支援が届いていないとする主張も流れている。
米大統領選まで1カ月を切った。ハリケーン被害に対する対応は選挙の争点にも浮上している。これが、デマの広がりを加速させていると考えられている。
デマは、ハリケーン被害者や救助・支援に携わっている人々の心理的負担を増していると分析されている。ハリケーン被害からの復旧を担う連邦緊急事態管理局(FEMA)のクリスウェル長官は米MSNBCテレビのインタビューで、デマを巡り「被災者の間で恐怖を生み出し、非常に危険だ」と非難した。
FEMAは今回のハリケーン上陸後、デマに反論するウェブサイトを特別に立ち上げている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、被災地で白人至上主義者の団体である「パトリオット・フロント」がひそかに支援活動を実施していたことが分かった。こうしたグループもデマを拡散し、混乱を利用して自分たちの団体への勧誘を進めているという。
今回のハリケーンを巡っては、共和党候補のトランプ前大統領も根拠がない主張を選挙ラリーで述べていると批判されている。トランプ氏は「(バイデン大統領とハリス副大統領が)ハリケーン被害者向けの災害救援基金を盗んだ。その盗んだお金を不法移民に渡して、選挙で投票してもらおうとしている」などと主張している。
トランプ氏に近い共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員はバイデン米政権が地球の気候に直接介入する「ジオエンジニアリング(気候工学)」を通じハリケーンを作り出したとの主張をX(旧ツイッター)で展開している。「彼らは天気を操作できる。それが不可能だと主張するのはばかげた話でウソだ」と述べている。
9日に上陸し、大規模な被害が懸念されていたハリケーン「ミルトン」について、フロリダ州のロン・デサンティス知事は11日の記者会見で「最悪のシナリオに発展しなかったが、復興作業に力を入れる必要がある」と述べた。
11日時点で死者数は少なくとも16人に上り、全米の停電情報を追跡するウェブサイト「パワーアウテージ・ドット・US」によれば、フロリダ州ではなお200万世帯で停電が続いている。
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