9日、米南部フロリダ州に近づく大型ハリケーン「ミルトン」=NOAA提供・AP

【ヒューストン=花房良祐】大型ハリケーン「ミルトン」が米国南部に近づいている。東部時間9日深夜から10日未明にもフロリダ州に上陸する見込みで、当局は避難を呼びかけているが、ドライバーが殺到してガソリン不足が深刻化している。9月末にも大型ハリケーン「ヘリーン」が上陸したばかりで地域に大きな打撃を与えそうだ。

6割のガソリンスタンドで売り切れ

フロリダ州西部から上陸し、半島を横断して大西洋に抜けるとみられている。バイデン大統領やデサンティス州知事は住民に安全な場所へ移動するよう呼びかけいる。米海洋大気局(NOAA)は「避難するための時間は終わりに近づいている」と早期の退避を促している。

一方、米CNNはハリケーン上陸が予想されるタンパ周辺の地域でガソリンスタンドの6割で売り切れたと伝えた。州全体では2割の店舗で売り切れたという。

米国は車社会のため、車で避難しようとガソリンスタンドに殺到したようだ。自宅に残ることを決めた住人も長期停電に備えて非常用発電機の燃料を買いためた。

フロリダ州には製油所がなく、石油製品を州外から調達する。交通の混乱が予想されるなかで供給不足を見越した「パニック買い」が起きたとの報道もある。

9日、売り切れとなったフロリダ州タンパのガソリンスタンド=ロイター

フロリダ州の上陸が予想される地域の地元当局は浸水した場合は電気自動車(EV)を移動させるように呼びかけた。塩水で車載用蓄電池が発火する恐れがあるという。

海岸から10キロ離れても洪水リスク

ミルトンは5段階で2番目に強い「カテゴリー4」の勢力。9日朝時点の最大風速は時速249キロメートルで一番強い「5」の基準をわずかに下回った。

気象当局によると、「4」だと木や標識が倒れ、建物の屋上や窓に深刻な被害を及ぼす。海抜約3メートル以下の地域は海岸から約10キロ離れた場所でも高潮・洪水の可能性がある。

米国ではハリケーンを最大風速などに応じて勢力を測る。「1」は時速119〜153キロ、「2」は177キロ以下、「3」は208キロ以下、「4」は251キロ以下、「5」は252キロ以上だ。カテゴリー3〜5は「大型ハリケーン」に分類される。

ハリケーンは通常、上陸後に勢力を落とす。ただ、カテゴリーが低くても被害が大きくなる可能性はある。合計230人以上が死亡したヘリーンは9月末にフロリダ州に「4」として上陸後、勢力を落としながら北上。大雨でノースカロライナ州の内陸部にも深刻な被害をもたらした。

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