【ワシントン=芦塚智子】米共和党の大統領候補であるトランプ前大統領の夫人、メラニアさんが3日、X(旧ツイッター)に人工妊娠中絶の権利の擁護を示唆する動画を投稿した。中絶は11月5日の大統領選で争点の一つになっており、波紋が広がりそうだ。
動画は8日に発売予定の回想録「メラニア」の宣伝。「全ての女性が出生時から持つこの不可欠な権利に関しては、疑いなく妥協の余地がない」と語っている。
回想録を事前に入手した英紙ガーディアンによると、回想録では「個人の自由という女性の基本的権利は、女性が望むならば妊娠を中絶する権限を与えている」とさらに明確に記している。
妊娠後期の中絶に関しても、胎児に深刻な異常があり死産や母親の命に関わる恐れもある場合は容認されるべきだとの見方を示した。
またトランプ氏が強硬な姿勢を取る移民政策について一部意見が異なることがあるとも明かしているという。
メラニア夫人が政治的な見解を明らかにするのは珍しい。選挙運動への参加も避けている。
メラニア夫人の中絶の権利擁護の明言は、中絶反対派が多い共和の立場と食い違う。ただ、大統領選に向けて無党派や女性有権者の取り込みが課題のトランプ氏は、中絶問題で姿勢を軟化させている。
米国では連邦最高裁が2022年に中絶の権利を否定する判断を下し、保守地盤の州の多くが中絶を禁止したり厳しく規制したりした。
トランプ氏は、最高裁の判断は自身が最高裁の保守派判事3人を指名したおかげとして保守派に成果を誇示する一方、中絶規制は各州が決めるべきだとの見解を示し全米一律の禁止は支持しない立場を表明した。
レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠や母体に危険がある場合は規制の例外にすべきだとの考えも繰り返し強調し、中道寄りの現実路線にかじを切っている。
共和は、民主党が争点化を狙う中絶問題よりもインフレや国境問題などに有権者の関心を向けたい考えだ。メラニア夫人の発言は中絶問題に脚光を当てる可能性がある。
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