【ワシントン=芦塚智子】米司法省は27日、共和党の大統領候補であるトランプ前大統領の陣営にサイバー攻撃をしかけて情報を盗み取ったとして、イラン国籍の3人を起訴したと発表した。情報を民主党のバイデン大統領陣営やメディアに漏洩し、トランプ氏が大統領選で不利になるよう狙ったとしている。
ガーランド司法長官は記者会見で、イランのほかロシアと中国を名指しして米国の選挙への干渉を企てていると批判した。ロシアは大統領選の結果操作を狙って偽情報やプロパガンダを拡散し、中国は州や地方レベルの選挙にも影響を与えようとしていると指摘。「自国民の人権を侵害しているこれらの独裁政権に、米国の民主主義プロセスへの口出しはさせない」と強調した。
司法省によると、起訴された3人はイラン革命防衛隊に所属。20年から元米政府高官や政府当局者、報道関係者らに対する広範囲のハッキング活動を実施した。
2024年6月末から7月初めにかけて、トランプ陣営から盗んだ情報をバイデン陣営の関係者に電子メールで送った。さらに7月から8月にかけて、共和の副大統領候補であるバンス上院議員に関する情報を複数のメディアに送付したという。
ハッキングは米国内の混乱を狙い、米政府関係者から違法に情報を入手するイラン政府の企ての一環だとした。入手した情報は、トランプ前政権が2020年にイラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を暗殺したことへの報復などに利用するのが目的だと説明した。
財務省は同日、起訴された3人のうちの1人と、イランのサイバーセキュリティー企業の幹部と社員6人について、20年と24年の大統領選に介入しようとしたとして制裁を科すと発表した。また国務省は、3人に関する情報に最高で1000万ドル(約14億2000万円)の賞金を出すと発表した。
トランプ陣営は8月にハッキング被害を明らかにし、イランが関与した可能性を示唆していた。
トランプ陣営は24日、国家情報長官室がトランプ氏にイランによる暗殺計画があると説明したと発表した。トランプ氏を巡っては7月と9月に暗殺未遂事件が起きた。いずれもイランとの関連は明らかになっていない。
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