【ニューヨーク=永富新之丞】訪米中の岸田文雄首相は23日(日本時間24日未明)、ニューヨークの国連本部で核軍縮・不拡散に関する友好国の枠組みのハイレベル立ち上げ会合を主催した。核兵器製造に使う物質の生産禁止条約の交渉開始をめざす。
議論したのは核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT、通称・カットオフ条約)。高濃縮ウランやプルトニウムといった核兵器の原料となる物質の生産を禁じる。
核兵器を増やさないようにする狙いがある。1993年に当時のクリントン米大統領が提案してから30年以上たったものの、具体的な交渉はまだ始まっていない。
首相は会合で中国やロシア、北朝鮮を念頭に「一部の国による不透明な核戦力の増強は、他国を巻き込む軍拡競争に火を付ける可能性がある」と演説した。FMCTの早期の交渉開始が必要だと訴えた。
会合には核保有国の米国、英国、フランスのほか、ブラジルやドイツなどの政府高官らが参加した。オーストラリアとフィリピンからは外相が出席した。
会合で発出した成果文書で「核兵器のない世界」の実現は国際社会の共通の目標だと明記した。FMCTが核軍縮・不拡散の取り組みに顕著かつ実質的に貢献すると確認した。
FMCTが発効するまでの暫定的措置として、自主的な核分裂性物質の生産停止や製造施設の解体、平和利用への転換を歓迎した。
首相は広島、長崎への原爆投下から2025年で80年を迎えることを踏まえて、被爆の実相を伝える取り組みを強化すると打ち出した。①被爆者らの海外派遣②被爆地への訪問促進③対外発信の強化――に集中的に取り組む。
広島選出の首相が会合を主催し、新たな取り組みを打ち出したことで、自身の退任後も核軍縮に向けた流れを次の政権に引き継ぐ狙いもあるとみられる。
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