会合には、上海とその周辺にある日本人学校や日系企業の関係者などが出席し、冒頭、出席者は亡くなった男子児童を悼み、黙とうをささげました。

このあと、上海総領事館の岡田勝総領事が「6月には蘇州の日本人学校のスクールバスが襲われている。緊張感を持って日本人や日本人学校の安全確保に全力を挙げていきたい」と述べ、中国政府に対し、再発防止や真相の究明を要請したことを説明しました。

続いて、上海日本人学校の須永清英事務局長が「児童の安全は何よりも優先される。学校単独では対応できないこともあるため、引き続きご支援をお願いしたい」と述べ、安全対策の整備に向けた協力を要請しました。

会合では、安全対策の強化や、日本人社会の不安への対応などを話し合い、情報交換を続けていくことを確認しました。

一方、事件が起きた南部・深センにある日本人学校の前には、20日も朝から中国語で「ごめんなさい」などとメッセージが添えられた花束が次々と供えられていました。

当局に身柄を拘束された44歳の容疑者について、中国に駐在する金杉大使は19日、中国外務省から「前科のある者による個別の事案だ」と説明を受けたことを明らかにしました。しかし、日本人を狙ったのかどうかなど、具体的な動機や背景は明らかにされていません。

中国外務省 “父は日本人 母は中国人”

中国外務省の林剣報道官は19日の記者会見で「不幸な事件が発生したことに遺憾の意と深い悲しみを表明する。亡くなった男子児童を哀悼するとともに遺族にお見舞いを申し上げる」と述べました。

そして、男子児童は日本国籍で、父親と母親がそれぞれ日本人と中国人であることを明らかにした上で、遺族が葬儀などを行うにあたって必要な支援を提供する考えを示しました。

一方、犯行の動機や、日本政府が事件の真相究明を求めていることに関する質問に対して、林報道官は「現在、詳しく捜査しているところだ。中国と日本は意思疎通を保っている」と同じ答えを繰り返すにとどめました。

また、今回の事件が偶発的に起きたものなのかどうか問われると「今のところ把握している状況によると、この事件は個別のもので、類似の事件はどの国でも起こりうる」と述べました。

6月にも江蘇省で事件 不安高まる

中国では最近、人が多く集まる場所などでの刃物による事件が相次いでいて、ことし6月には東部の江蘇省蘇州で日本人学校のスクールバスが、刃物を持った男に襲われ、日本人の親子がけがをし、男を止めようとした中国人女性が死亡する事件が起きていることから、現地で生活する日本人の間で安全への不安が高まっています。

中国 蘇州 日本人学校バス襲撃 重体の中国人女性が死亡

駐在員と家族の一時帰国認める企業も

中国に進出している日系企業の間でも対応に乗り出すところが出ています。

このうち、大手電機メーカーの「パナソニックホールディングス」は、中国に駐在する社員とその家族について、状況に応じて一時帰国を認めることを決めました。

これに加え、カウンセリングの窓口を設け、生活面や安全面での不安などについて相談に応じるほか、家族のケアのため、社員の柔軟な勤務を認めるとしています。

このほかにも、社員やその家族に対し、安全面での注意喚起を強化する企業が相次いでいて、日中間の経済や人的交流への影響が懸念されます。

事件を受け イベントの中止相次ぐ

事件を受けて、中国の日本人社会では、安全面を考慮してイベントの中止が相次いでいます。

北京では、日本人会が19日夜、予定していた日本人の大学教授の講演会を中止したほか、日本人が多く住むサービスアパートメントでは、21日予定されていた親子の親睦イベントが延期されるということです。

事件があった深センに近い広州でも、日本人が多く参加する市内などを巡るツアーが中止されるなど、中国各地の日本人社会に影響が広がっています。

林官房長官「事実関係の説明求める」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「これまでに中国側からは『政府として中国にいる日本人を含む外国国民の安全を守るため最大限の努力をしたい。今回の事案は個別の事案だ』との説明があった。引き続き中国側に対し、しっかりとした事実関係の説明と子どもたちの安全確保を強く求めていく」と述べました。

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