FRBは17日から2日間、金融政策を決める会合を開いています。

パウエル議長は8月の講演で「金融政策を調整する時が来た」と述べ今回の会合で利下げに踏み切る考えを示しました。

背景にあるのはインフレ率の低下傾向と労働市場の減速傾向です。

8月の消費者物価指数は5か月連続で前の月を下回り、3年半ぶりの低い水準となりました。

こうした中、市場ではFRBが2020年3月以来、4年半ぶりとなる利下げを決めることがほぼ確実視されています。

FRBは日本時間の19日午前3時にその内容を発表します。

記録的なインフレとの闘いで高金利を続けてきたFRBの金融政策は大きな転換点を迎えることになりそうです。

なぜ利下げ 背景に労働市場の減速傾向

FRBはなぜ、利下げに踏み切ろうとしているのか。

FRBには物価の安定と雇用の最大化という2つの使命がかせられていますが、これまで優先してきたのが物価の安定です。

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大への対応として政府による巨額の財政支出、コロナ禍からの経済の正常化にともなう需要の拡大、ロシアによるウクライナ侵攻などによってインフレが加速。

おととし6月には消費者物価指数が前の年の同じ月と比べ9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。

FRBはインフレを抑え込むため異例のスピードで利上げを続け、おととし以降、利上げの回数は11回に及びました。

そして政策金利は5.25%から5.5%の幅と、去年7月に2001年以来の高い金利水準となり、1年以上もその高金利が続いています。

その結果、インフレ率は低下傾向となってきましたが、減速傾向があらわれてきたのが労働市場です。

9月4日に発表された7月の雇用動態調査では景気動向を敏感に示すと言われる農業分野以外の求人件数は前の月から23万件余り減少して767万件余りとなり、2021年1月以来、3年半ぶりの低い水準となりました。

また失業している人1人あたりに何件の求人があるかを示すデータは1.1以下となり、2021年5月以来の低い水準となりました。

FRBの最新の経済報告でも雇用主が需要への懸念と先行きの不透明さから採用の拡大に慎重になっていて、求職者は仕事を確保するのがますます難しくなり時間もかかるようになったと指摘しています。

こうした中、パウエル議長は8月のジャクソンホールの講演で「労働市場のこれ以上の冷え込みや減速は求めも、望みもしない。インフレが再加速するリスクが減った一方、雇用が悪化するリスクは増大した」と発言。

市場では、FRBが金融政策の軸足を「物価の安定」から「雇用の最大化」に移し、景気を下支えするための利下げに踏み切ることを事実上、宣言したと受け止められました。

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