北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は、9日の建国76年に際した演説で、核兵器の数を「幾何級数的」に増やす政策を貫徹していると述べた。建国記念日を前に軍事関連施設も相次いで訪れており、軍事力強化への強い意思を改めて示した形だ。

 10日の朝鮮中央通信によると、金氏は演説で、米国主導の軍事ブロックが周辺の安全保障環境に重大な脅威をもたらしていると主張。「強力な軍事力保有は、一歩たりとも譲歩してはならない義務であり、生存の権利だ」と強調した。

 また、「我々は責任ある核保有国」だとし、「自分を守るために持った核兵器はだれの脅威にもならない」と述べて核保有を正当化。「核戦力を絶えず強化し、全ての武力を完全な戦闘準備態勢に置くための対策と努力を倍加する」とした。

 これに先立ち、朝鮮中央通信は8日、金氏が海軍基地の建設予定地を視察したと伝えた。金氏は既存の施設では収容できない最新型の大型艦艇や潜水艦を近く保有すると説明し、そのための基地建設を「焦眉(しょうび)の課題」と位置づけた。同通信は8日、金氏がほかにも兵器の生産拠点などを視察したとも伝えた。

 軍備の増強に進める北朝鮮だが、全てが順調に進んでいるわけではない。5月には「軍事偵察衛星」の打ち上げに再び失敗し、今年中に3基としていた目標の達成は難しいとの見方が強まっている。7月中と予告していたミサイルの発射実験も行われていない。

 一方、建国記念日の金氏の演説には、米国を激しく非難するような言葉はなかった。韓国の専門家からは「11月の米大統領選の行方を見守っているためでは」との指摘が出ている。(ソウル=太田成美、貝瀬秋彦)

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