【ヒューストン=花房良祐】航空機大手の米ボーイングと同社の米国西部の社員約3万3000人が加入する労働組合は8日、新たな労働協約に合意したと発表した。過去最大級となる25%の賃上げと、次世代航空機の米西部シアトル郊外の工場での生産が柱。2008年以来となるストライキは回避される見通しとなった。
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現在の労働協約は9月12日に失効予定で、新協約を交渉する過程で組合がスト権を確立した。交渉が決裂して組合員の3分の2以上がストに賛成すれば、13日から工場が停止する懸念もあった。
組合は8日、「合意はすべての組合員にとっての利益だ。会社を建て直すのは組合員だ」と歓迎するコメントを公表した。
新協約の期間は4年間。組合は4年間で40%の賃上げを求めていたが、雇用の維持に直結する生産地の確約などと引き換えに25%の賃上げ率で経営サイドに歩み寄った。組合員の社会保障や休暇制度の充実でも合意した。
西部シアトル郊外などにある小型旅客機「737MAX」や大型機「777」、軍用機を製造する複数の工場の作業員の給与を大幅に引き上げる。今後開発する次世代航空機をシアトル郊外の工場群で生産することも組合に確約した。
同社では1月、飛行中の737MAXの胴体に穴が開く事故が発生し、その後も製造品質問題が相次いだ。生産現場の混乱が尾を引いて出荷台数は低迷している。経営の立て直しを目指して8月に就任したケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)にとって、16年ぶりの新協約合意は目先の経営課題を一つクリアしたといえる。
08年には労使交渉がこじれ、シアトル郊外などの工場郡が約2カ月のストに突入したこともあった。ボーイングは2011年、東部サウスカロライナ州に組合のない工場を開設し、中型機「787」の生産を開始した。発言権の強すぎるシアトル郊外の工場の組合をけん制する意図があったという見方がある。
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