【ニューヨーク=吉田圭織】米北東部マサチューセッツ州の一部の地域で、蚊が発生しやすい夕方以降の外出を自粛するように求める勧告が出された。蚊が媒介するウイルス感染症の東部ウマ脳炎のヒトへの感染が確認されたためだ。気候温暖化で蚊の活動が活発になり、感染症がこれまで発生しにくかった地域に広がっている。
80代男性の感染が確認されたオックスフォードとその周辺の町では、住民に9月30日までは午後6時まで、10月からは午後5時までに屋外での活動を終わらせるよう勧告した。マサチューセッツ州は住民には長袖を着たり、虫よけスプレーを使ったりするよう呼びかけている。
馬の東部ウマ脳炎感染が確認されたプリマス郡では、蚊が発生しやすい夕暮れから夜明けまで公営の公園や屋外運動場などの閉鎖を始めた。午前2時から夜明けまで殺虫剤を散布する。
東部ウマ脳炎のウイルスは鳥と蚊のあいだで循環し、蚊を介してヒトや馬に感染する。馬からヒト、ヒトからヒトへは感染しない。ヒトでは50歳以上や15歳以下で起こりやすい。9割以上の人は感染しても無症状だが、症状が出れば致死率は3割にも上る。現時点でワクチンや治療法は存在せず、回復しても患者の半数は神経学的後遺症が残る。
米疾病対策センター(CDC)によれば、現時点で米国で感染した人は計3人。マサチューセッツ州とニュージャージー州、バーモント州でそれぞれ1人の感染が確認されている。
東部ウマ脳炎以外にも蚊を介した感染症の拡大が問題となっている。ニューヨーク市では西ナイル熱のウイルスが確認され、現時点で少なくとも4人が感染した。同市の保健省はセントラルパークなどで26日から殺虫剤を散布すると発表している。国立アレルギー感染症研究所長を務めたアンソニー・ファウチ氏も感染し、入院していたことが24日、明らかになった。
気候変動に伴って蚊が活動できる期間が長くなっており、感染地域が広がっている。米非営利研究組織「クライメート・セントラル」によれば、蚊が発生しやすいとされる湿度が42%以上でかつ気温が最低10度から最高35度の日が、40年前に比べて7割の地域で平均16日間増えた。なかでも最も増えている地域の一つがマサチューセッツ州やニューヨーク州などを含む北東部だという。
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