【シカゴ=飛田臨太郎】米民主党の全国大会は22日、最終日を迎え、大統領候補のハリス副大統領が同日夜(日本時間23日昼)に指名受諾演説に臨んだ。「21世紀における中国との競争は米国が制する」と宣言した。「世界でのリーダーシップを放棄するのではなく、強化する」と表明した。

ハリス氏は黒人かつアジア系の女性として米国史上初の大統領を目指す。指名受諾演説は実現したい国家像や政策を米国民に示す場だ。外交政策は大統領候補になってから初めて、自身の考えを広範に説明した。

「世界において、我々の価値観と安全保障を前進させるために強固でなければならない」と説いた。「トランプ(前大統領)を応援している(北朝鮮・総書記の)金正恩(キム・ジョンウン)のような暴君や独裁者に寄り添うつもりはない」と強調した。

同盟国との協調を重視し、中国やロシアなどの権威主義国家に対峙するバイデン米政権の基本方針は踏襲する。「ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)の同盟国とともに力強く立ち上がる」と述べ、ロシアのウクライナ侵略に対抗していく考えを示した。

演説は自身の半生を紹介するところから始めた。高校生の時に親友が義理の父から性的虐待を受け、自宅でともに生活するようになったことが検事を志した理由だと明かした。

「誰もが安全や尊厳、正義のなかで生きる権利を持っている」と力説し、自身の根底にある哲学を訴えた。

「今回の選挙で分裂を乗りこえる貴重な機会を得た。新しい道を切り開くチャンスだ」と触れ「すべての米国人のための大統領になる」と語った。

経済政策を巡っては「強力な中間層を築くことが(大統領としての)決定的な目標になる」と述べた。「1億人以上の米国人に恩恵をもたらす中間層への減税(の法案)を成立させる」と言及した。

ハリス氏は「自由」をスローガンに掲げ、トランプ氏が再選すれば自由や民主主義の存続が危ぶまれると訴えた。「(トランプ氏には)ジャーナリストや政治的敵対者、敵と見なした者は誰でも投獄するという明確な意図がある」とまで語った。トランプ前政権を念頭に「我々は後戻りしない」と連呼した。

共和党はバイデン政権下で急増した不法移民を移民担当責任者であるハリス氏の「失政」と追及している。ハリス氏は移民制度が「破綻した」と認め「改革し、国境を守る」と述べた。

「移民国家としての誇り高き伝統を守る」「市民権を獲得する道をつくる」とも語った。すでに米国内に滞在している不法移民を強制的に国外に送還すると公約するトランプ氏との違いにも触れた。

トランプ氏は7月の共和党全国大会で指名受諾の演説をした。銃撃事件後初となる演説で「米社会の不和と分断を修復しなければならない」と語った。党派対立が続く米国の団結を目指すとしたが、後半からは従来の攻撃的な発言に回帰していった。

経済政策はバイデン政権下の物価高を非難し、減税と化石燃料の採掘拡大で、経済の活性化を図る。外交政策は自身が返り咲けば「現政権がつくり出した国際的危機をすべて終わらせる」と主張している。

米国社会はリベラル派と保守強硬派の間で文化や社会問題を巡る分断が進む。二大政党が双方を敵対視する度合いはかつてなく強い。こうした状況に嫌悪感を示す穏健な無党派層に向けて、どちらの候補者が訴求できるかが勝敗を決める。

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