ブロンフマン氏が、パラマウントに対抗買収案を提出したことが分かった(19年4月)=ロイター

【ニューヨーク=清水石珠実】メディア業界の大物エドガー・ブロンフマン・ジュニア氏が、米メディア大手パラマウント・グローバルに買収提案したことが20日までに分かった。パラマウントが7月に米映画製作大手スカイダンス・メディアとの間で合意した買収計画に対抗する。米報道によると、パラマウントは21日にもブロンフマン氏の買収提案を審査する特別委員会を開く。

パラマウントは、事実上のオーナーであるレッドストーン家が非上場企業の「ナショナル・アミューズメント(NAI)」を通じて議決権の約8割を握る。米メディアによると、ブロンフマン氏はNAIを買収するとともに、パラマウントにも出資して少数株主になることを提案したという。同氏が今回の提案を通じて投じるのは合計で43億ドル(約6250億円)になる。

パラマウントは7月上旬、スカイダンスがNAIを買収したのちに、パラマウントとスカイダンスが合併する枠組みで合意した。45日間の猶予期間を設けて他社からの買収提案を受け付けていたが、21日の受付期限を前にブロンフマン氏が対抗案を提出したかたちとなった。取締役会が設置した特別委員会が同氏の提案を正式検討する決定を下すと、猶予期間は延長される可能性があるという。

米ネットメディア「アクシオス」は20日、期間が延長されれば、ブロンフマン氏側は買収提案額を55億ドルまで上げる準備があると報じた。スカイダンスとの合意を破談にすることで生じる違約金も負担する予定という。

ブロンフマン氏は、カナダの酒造会社、シーグラムの御曹司。同社の経営を率いた後、米ワーナー・ミュージック・グループで最高経営責任者(CEO)を務めた経験をもつ。若い頃にはハリウッドで映画製作に関わり、現在はメディアとテクノロジー専門の投資ファンドを経営している。

スカイダンスは米オラクルの共同創業者ラリー・エリソン氏の息子、デービッド・エリソン氏が経営する。米俳優トム・クルーズさん主演の映画「トップガン マーヴェリック」をパラマウントと共同製作するなど、両社のつながりは深い。米投資会社と組み、パラマウントの買収には合計で80億ドルを投じる計画だ。

スカイダンスの提案は拠出総額で勝るが、その枠組みに対しては株主の間でパラマウントの価値を過小評価しているとの批判が根強い。合併を伴わないブロンフマン氏の提案に株主の支持が集まる可能性がある。同氏が米メディア界で大手企業の経営経験を持つことへの評価もある。

パラマウントの買収には、ソニーグループも一時関心を示していたが「戦略にフィットしない」として買収合戦から撤退した。パラマウントは、地上波テレビ局のCBSやケーブル局の「MTV」や「ニコロデオン」、映画大手パラマウント・ピクチャーズなどを傘下に抱える。映画事業は「ゴッドファーザー」や「フォレスト・ガンプ/一期一会」などの有力なコンテンツを持つ。

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