【フランクフルト=林英樹】中国から輸入する電気自動車(EV)への追加関税をめぐり、欧州連合(EU)の欧州委員会は20日、米テスラに対して最低水準となる9%を課すと発表した。追加関税は7月5日から暫定適用しているが、テスラは「中国政府から多額の補助金を受けていない」として異議を申し立てていた。
中国政府による補助金で不当に安値でEVを輸出し「欧州の自動車メーカーに損害を与えている」として、欧州委は6月中旬、EU域内に輸入される中国製EVについて現行の10%の関税に上乗せする方針を公表した。
追加関税の税率は、MGブランドを展開する上海汽車集団に対し36.3%、スウェーデンのボルボ・カーを子会社に抱える浙江吉利控股集団に19.3%、比亜迪(BYD)には17%とした。
このほか、調査に協力した企業の税率は21.3%、協力しなかった企業は36.3%とした。ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)の一部ブランドなど2023年10月の調査開始の時点で発売しておらず、調査に協力できなかった企業については「低い関税率の恩恵を受ける可能性がある」とした。
欧州委は20日、テスラについて「他の中国EVの輸出生産企業と同様の調査を行った」と強調。そのうえで「制度によって補助金の水準が異なっており、協力の度合いや資金調達における組織構造の違いなど、さまざまな要素が影響した」と最低税率を適用した理由を説明した。
中国政府は反発を強めている。「法的根拠を欠き、世界貿易機関(WTO)規則に著しく違反する」として中国商務省は9日、WTOに提訴したと発表した。中国側はEUから輸入する豚肉について不当廉売の調査を開始。欧州車メーカーが強い高級エンジン車への追加関税を示唆するなど、報復の構えを見せている。
今回公表した追加関税の税率は、EU加盟国による投票などをへて最終決定する。欧州委は20日「要件を満たさなかった」として輸入開始時点に遡って追加関税を課す方針は撤回すると明らかにした。
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