反捕鯨団体「シー・シェパード」の元代表、ポール・ワトソン容疑者は、日本の調査捕鯨船に対する妨害行為を指示したとして、2010年、海上保安庁が威力業務妨害などの疑いで逮捕状を取り、ICPO=国際刑事警察機構を通じて国際手配していました。
そして先月21日、デンマーク領グリーンランドで現地の警察に拘束され、日本政府がデンマーク側に身柄の引き渡しを求めています。
ワトソン元代表の勾留期限にあたる15日、現地の裁判所で本人も出廷して審理が行われ、この中で元代表側は「日本では公正な裁判が受けられない」などと主張し、釈放を求めました。
これに対し、警察側はデンマーク司法省が日本の要求を精査しているとしたうえで、元代表がかつてドイツで保釈中に逃亡したと指摘し、勾留の延長を求めました。
その結果、裁判所はワトソン元代表の勾留を来月5日まで、3週間延長する判断を示し、元代表側はこれを不服として直ちに上訴しました。
ワトソン元代表の日本への引き渡しをめぐっては、反捕鯨国を中心に反対の声が上がるなど、国際的な関心が集まっています。
ポール・ワトソン元代表とは
ポール・ワトソン元代表はアメリカとカナダの国籍を持つ、73歳の環境活動家です。環境保護団体「グリーンピース」の創設者の1人ですが、活動方針の違いなどから1977年に脱退し、世界の海や海洋生物の保護を目的とする団体「シー・シェパード」を新たに設立しました。
「シー・シェパード」は特に捕鯨に対する攻撃的な妨害活動で知られ、日本の調査捕鯨船に無断で乗り込んだり、薬品の入った瓶を撃ち込んで乗組員にけがをさせたりしました。
ワトソン元代表はこうした過激な妨害行為を指示したとして2010年、海上保安庁が威力業務妨害などの疑いで逮捕状を取り、ICPO=国際刑事警察機構を通じて国際手配しました。
さらに、ワトソン元代表はサメ漁をしていたコスタリカの船の航行を妨害した疑いで2012年、ドイツの司法当局に拘束されましたが保釈中に逃亡し、その理由について「日本がドイツ政府に身柄の引き渡しを要請したことを知り、日本で拘束されれば2度と釈放されないと考えた」と説明しました。
そして2013年、「日本鯨類研究所」などが「シー・シェパード」による妨害活動の差し止めを求めていたアメリカでの裁判に出廷し、「違法な行為に介入することは間違いではない」と述べ、活動の正当性を主張しました。
しかし、その後「シー・シェパード」とも活動方針の違いが顕在化しておととし、メンバーから除外され、みずからの名前を冠した団体「キャプテン・ポール・ワトソン財団」を設立して、アドバイザーという立場で捕鯨に対する妨害活動を続けています。
その長年にわたる、捕鯨の根絶を目指す活動をめぐっては、反捕鯨国を中心に多くの支援者がいる一方、動物愛護や環境保護を名目に破壊行為を正当化する「エコ・テロリズム」だとして、環境保護団体などからも批判が寄せられてきました。
ワトソン元代表が拘束された経緯
ワトソン元代表が設立した団体「キャプテン・ポール・ワトソン財団」によりますと、ワトソン元代表は先月21日、山口県の下関港を母港とする捕鯨母船「関鯨丸」の操業を妨害するため北太平洋に向かう途中、グリーンランドの中心都市ヌークの港に立ち寄ったところ、現地の警察に拘束されました。
この団体は、ワトソン元代表に対するICPO=国際刑事警察機構の国際手配が、数か月前、「赤手配」と呼ばれる、容疑者の身柄の拘束を求めるものではなくなっていたと指摘し、「ワトソン氏に安心感を与えるため、日本政府が意図的に隠した」と主張した上で「政治的動機に基づく身柄の引き渡しの要求には応じないよう求める」としています。
デンマーク司法省は日本政府から先月31日にワトソン元代表の身柄の引き渡し要求があったことを明らかにし、現地の警察と連携しながら慎重に判断する方針を示しています。
こうした中、反捕鯨国を中心に引き渡しに反対する声が高まっていて、特にワトソン元代表が住むフランスではマクロン大統領が身柄を引き渡さないようデンマーク政府に要請したほか、釈放を求めるインターネット上の署名が1週間余りで70万近く集まったと現地メディアは伝えています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。