ポールスターが生産を始めた米国工場(米東部サウスカロライナ州)

【フランクフルト=林英樹】スウェーデンの高級電気自動車(EV)ポールスターは14日、米国で多目的スポーツ車(SUV)の生産を始めたと発表した。ポールスターは中国民営車大手の浙江吉利控股集団がスウェーデンの子会社、ボルボ・カーと立ち上げた。初となる米国生産は、中国製に対する重関税を回避する狙いがある。

新型SUV「ポールスター3」を生産するのは、米東部サウスカロライナ州にあるボルボの組み立て工場だ。米国内で9月に納入を始め、欧州にも輸出する。

ポールスターはこれまで四川省成都市など中国国内の工場で製造し、各国に輸出していた。ポールスター3の主力工場は米国に切り替わる見通しだ。

このほか、4月に欧州で販売を始めた新型SUVクーペ「ポールスター4」については2025年半ばに韓国で生産を始める計画を掲げる。将来的には欧州でも工場立ち上げを検討しており、ボルボや提携する仏ルノーなどと協議する予定だ。

ポールスターが中国国外への生産移管を急ぐ背景に、中国製に対する欧米の重関税がある。米国は8〜9月、通商法301条に基づく中国製への制裁関税として、EVや車載電池などの税率を引き上げる。特にEVに対する関税は25%から100%に大幅上昇することになる。

欧州連合(EU)も7月、中国製EVに対し、従来の10%の関税に17.4〜37.6%を加える暫定措置を始めた。

ポールスターのトーマス・インゲンラート最高経営責任者(CEO)は米国生産の開始について「重要なステップになる。(欧州への輸出で)より広範囲に事業を強化できるようになる」とコメントした。

懸念も残る。米共和党のトランプ前大統領は大統領選で再選した場合、中国製に対するさらなる関税引き上げを示唆している。

米国の制裁関税では中国製車載電池の税率も7.5%から25%に上がる。ポールスターは車載電池世界最大手、中国寧徳時代新能源科技(CATL)から調達しており、コスト増は避けられない見通しだ。

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