米フィリピンの定例合同軍事演習「バリカタン」が22日、フィリピンで始まった。フィリピンの領海外に出て、中国と領有権を争うスプラトリー(南沙)諸島のある排他的経済水域(EEZ)内で海上演習をするほか、米軍の中距離ミサイル発射装置の配備訓練も行う。いずれも初の試みで、米比は中国への牽制(けんせい)を強めている。

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 フィリピン軍によると、今回の演習は約1万6千人超の規模で5月10日まで。オーストラリアとフランスが正式参加し、日本や韓国、南シナ海で中国と領有権や海洋権益を争うベトナム、インドネシアなど14カ国もオブザーバー参加する。

 実地演習の場所は、台湾に近いルソン島最北部とスプラトリー諸島を管轄するパラワン州が中心だ。「敵対勢力に占拠された島々の奪還」を想定した訓練を含み、「敵艦」に見立てた船を撃沈させる実弾演習もある。

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 開幕に先立ち、フィリピン軍トップのロメオ・ブラウナー参謀総長は「軍の相互運用性と即応性を高めることが目的。海洋安全保障のため、軍事力強化への歩みを加速させる」と説明した。

中国が実効支配の島、射程に収まる可能性

 EEZ内での海上演習はパラワン州西部の海域で行い、フランス海軍とフィリピン沿岸警備隊も参加する。砲撃や船舶の拿捕(だほ)、救助捜索などの連携を確認するという。

 放送局GMAによれば、中距離ミサイル発射装置はルソン島北部の非公開の場所に設置された。今回の演習は空輸で陸上に配備できるかどうかをテストするもので、実弾演習は行わないという。

 ただ、装置には迎撃ミサイル「SM6」や巡航ミサイル「トマホーク」を搭載できる。配備場所によっては中国が実効支配するスカボロー礁などが射程に収まる可能性があり、中国との間で緊張が高まることは必至だ。

 フィリピン側担当者のマイケル・ロヒコ大佐は今月4日、地元メディアの取材に「国益を守るためには、12カイリ(領海)を超える必要がある」と強調。中国との緊張がさらに高まるのでは、との問いに対しては「それは彼らの問題で、我々の問題ではない」と答えた。

 米比は11日、日本を含めた初の3カ国首脳会談を開き、安全保障上の協力拡大で合意した。共同声明では中国が「危険で攻撃的な行動」を進めているとして「深刻な懸念」を表明していた。(バンコク=大部俊哉)

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