コカ・コーラは欧州向け商品をキャップ「一体型」に切り替えた

【フランクフルト=林英樹】欧州連合(EU)で3日から従来のキャップが外れるペットボトルの販売を禁止し、両者を切り離せられない「一体型」のみを販売可能にする規制が始まる。キャップの回収率を高め、海洋プラスチック汚染を抑えるのが狙い。EUへの輸入品も対象で、伊藤園など飲料メーカーは対応に動くが、使い勝手や効果に疑問の声も上がる。

2019年6月に決定したEU指令では、3リットル未満のペットボトルのほかジュースや牛乳パックについてプラスチック製キャップを取り外せないように設計することを義務づけた。EU加盟各国が同指令に対応した国内法を整備し、24年7月3日から施行する。

デンマークの欧州環境機関(EEA)の調査では、欧州の主要な海岸で100メートルあたりに見つかる廃棄プラスチックの個数(中央値)は22年に481個と、21年から8割増えた。新型コロナウイルス禍で外出を控えた時期を除き、増加傾向にある。

多くの国ではペットボトルを個別回収しリサイクルしているが、キャップについては家庭や外出先でゴミとして廃棄されるケースが目立つ。EUは「キャップは海岸で見つかる廃棄プラスチックで最も多い」と指摘。一体型でペットボトルと同時回収することで、海洋生物の生態系を脅かす廃棄プラスチックを「年10%減らせる」とする。

EUで事業展開する飲料メーカーは対応を迫られる。伊藤園は24年1月、日本からEUへの緑茶「お〜いお茶」の輸入を停止。3月、ドイツに同社初の欧州拠点を設け、緑茶とパッケージを現地生産に切り替えた。

伊藤園はキャップ一体型の新パックで緑茶の欧州販売を本格化する(6月28日、独西部デュッセルドルフ)

キャップ一体型パックはスイスの紙容器メーカー、テトラパックが受託生産する。伊藤園欧州代表の鈴木彰斗氏は「コストはかかるが、欧州で健康志向が広まる中、日本の無糖緑茶のおいしさと価値を知ってもらいたい」と販売拡大に意欲をみせる。

米コカ・コーラや英ユニリーバなど飲料世界大手もEU域内の商品についてすでにキャップ一体型に変更した。

ただ、すでに流通が始まった一体型に対する消費者の反応は芳しくない。「鼻に当たって飲みにくい」「コップに注ごうとしたらキャップに当たって飛び散った」「扱いにくくてイライラする」など、SNS(交流サイト)では否定的な意見が目立つ。

欧州の飲料業界団体による委託調査で、PwCは一体型でキャップの接続部分が加わり、プラスチック使用量が年最大20万トン増え、製造設備変更で最大87億ユーロ(約1兆5000億円)の負担増になると試算した。

こうした状況を踏まえ、一体型を義務化しなくても「キャップ回収を周知すれば十分」といった反対の声も飲料大手からあがる。EUは27年7月までに新規制の効果を検証し、必要があれば規制を変更するとしている。

EU域外では地理的に近い英国が同じ規制を導入予定だ。一方、日本に波及する可能性は現時点では高くない。

ペットボトル推進協議会によると、日本のペットボトル回収率は22年に94%、リサイクル率は87%だった。欧州はそれぞれ57%、43%(21年)、米国は27%、18%(20年)で、日本は国際的に高い水準にある。日本でもキャップの回収率は10%前後と低いが、業界団体はリサイクル網の強化で改善可能だとしている。

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