【ヒューストン=花房良祐】米議会上院は18日、航空機大手の米ボーイングの事故を起こした小型機「737MAX」の品質問題を巡り、公聴会を開いた。737MAXの生産を巡り新たな告発が発覚しデビッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)が釈明に追われた。米国を代表する製造業は、相次ぐ品質問題と、問題に対する内部告発が絶えず、その解消に向けた道筋がみえない状況が続く。
18日午後に始まった公聴会は、2018〜19年に起きた737MAXの2回の墜落事故で亡くなった乗客の遺族らが傍聴席で遺影を掲げ、カルフーン氏に罵声を浴びせる異様な雰囲気のなかで始まった。
公聴会のなかで、カルフーン氏は「ボーイングの企業文化は完璧からはほど遠いが、対策をとっていて改善している」と釈明することになった。
公聴会開催に先立ち、上院がボーイング社員から内部通報があったことを明らかにしていたからだ。ボーイングの検査担当社員が上院に告発し、上院が17日に関係先に内容を共有した。ボーイングは同日に文書で内容を受け取ったという。
24年1月に飛行中の737MAXの胴体に穴が開く事故が発生し、安全性に対する懸念が再び強まったボーイング。今回の通報は改めて、製造現場での品質管理が行き届いていないことを示すものだ。
通報によると、数百点の不良品の部品が不適切に管理されていたといい、一部は機体に取り付けられた可能性もあるとしている。23年までに400程度の不良品の部品が紛失し、記録も消去された。本来、航空機の不良部品は製造ラインで使用されるのを防ぐため適切に記録し、破棄するか修理する必要がある。
深刻なのは、内部通報者がこの不良品を巡る問題について、ボーイングが隠蔽したと指摘していることだ。規制当局である米連邦航空局(FAA)が工場を視察した際、ボ不良部品を意図的に隠したとしている。
ボーイングの製造品質を巡っては24年4月にも内部通報があったばかり。今回はこれに続く通報になる。
18日の公聴会ではリチャード・ブルメンタール上院議員らが内部通報者に対して、会社が処遇などを巡り圧力をかけたとも指摘した。ボーイングの企業風土についてはこうした懸念が拭えず、24年3月には過去に内部通報し動画配信大手「ネットフリックス」のドキュメンタリーで取り上げられたこともある元社員が心労で自殺している。
18日の公聴会でカルフーン氏は「米国で飛行する航空機の3分の2はボーイング製だ」とたうえで「毎日、自社製機体に搭乗する数百万人の乗客・乗員の安全に責任がある」と話したが、品質問題を巡る混乱は収束するどころか、むしろ拡大しているようにもみえる。
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