メキシコ大統領選で圧勝したシェインバウム氏(3日、メキシコシティ)=AP

2日に投開票したメキシコ大統領選で与党候補のシェインバウム前メキシコシティ市長が圧勝した。同国には約1300社の日本企業が進出済みだ。強い支持を背に、企業活動を後押しする環境整備に力を尽くしてもらいたい。

ロペスオブラドール現政権は低所得者への給付拡充やインフラ整備で支持を集めた。同国初の女性大統領になるシェインバウム氏はこの路線継承を明言している。

同日の総選挙でも与党が地滑り的勝利を収めた。これを受けて通貨ペソは急落し、株式と債券を含むトリプル安となった。政府・与党の力が一段と増し、財政悪化や国有企業の優遇に拍車がかかるとの警戒感からだ。市場の懸念を重く受け止めるべきだ。

米国に隣接し、人件費が割安な利点から、メキシコに生産拠点を構える企業は多い。昨年の対内直接投資額は360億ドル(約5兆6千億円)超と3年連続で増えた。日本からの投資額も米国、スペイン、カナダに次ぐ規模だ。人口は日本を抜いて1億3千万に迫り、消費市場としての魅力も増す。

一方で、現政権は犯罪組織対策と治安の回復では目立つ成果を上げられなかった。水不足が深刻で、再生可能エネルギーの導入も後手に回っている。対内投資に勢いがある今こそ、一連の課題に有効な対策を打ってほしい。

米中対立の余波も不安材料だ。バイデン米政権は中国企業がメキシコ経由で対米輸出を増やす動きを警戒する。トランプ前米大統領は、11月の大統領選で勝てばメキシコ生産の中国車に100%の関税を課すと警告している。

対米輸出を支える米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は2年後に見直し時期を控える。新大統領は北米地域の経済統合を後戻りさせないことが肝要だ。

国境管理も重要になる。メキシコを通って米国を目指す不法移民や麻薬密輸への対策は米大統領選の争点に浮上している。主張の隔たりを埋めて解決策を探る対米外交が新政権の宿題といえよう。

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