メキシコの大統領選挙は、▽与党の左派政党「国家再生運動」のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長と、▽野党連合のソチル・ガルベス前上院議員など、3人が立候補していて、治安対策が大きな争点になっています。
現地の世論調査によりますと、選挙は事実上、シェインバウム氏とガルベス氏、2人の争いになっていて、メキシコで初めての女性大統領が誕生する公算が大きくなっています。
このうちシェインバウム氏は、選挙運動が認められている最終日の5月29日、首都メキシコシティー中心部の広場で大規模な集会を開き、「女性と変革の時代の到来をここで宣言したい。それは恐怖を感じることや暴力のない生活を実現するということだ」と訴えました。
また、ガルベス氏は同じ日の集会で、「治安がかつてなくよいわけなどない。わたしは最も勇敢で、犯罪に立ち向かう大統領になる」と述べ、治安の回復を訴えました。
メキシコでは、現在のロペスオブラドール大統領が、軍の影響力を拡大させたり国家警備隊を新設したりして麻薬組織対策を進めましたが、暴力事件は後を絶たず、治安の回復が大きな課題になっています。
メキシコ大統領選挙は2日に投開票が行われ、日本時間3日の昼ごろには大勢が判明する見通しです。
同じ日に議会や州知事の選挙なども 候補者などへの殺人も相次ぐ
今回のメキシコ大統領選挙は、同じ日に議会の選挙と8つの州の知事選挙、それに首都メキシコシティーの市長選挙をはじめ1800を超える自治体の首長選挙などが一斉に行われます。
こうした中、国内では選挙に立候補する人に対する暴力が相次いで起きました。
選挙活動が認められている最終日の5月29日にも、南部ゲレロ州の選挙集会で候補者の男性が拳銃で撃たれ、死亡しています。
地元メディアはこれまでに、候補者と立候補予定者だけであわせて30人以上が殺害され、親族や選挙関係者も含めると200人以上が殺害されたと報じています。
このメディアは専門家の話として、殺人事件の数だけ、犯罪集団と取り引きをした候補者がいることを示していて、当局がこうした事態を黙認し続ければ、国の広い範囲が麻薬組織の支配下に置かれることになると指摘しています。
子どもなど行方不明者 11万人以上 多くはここ15年ほどで
5月10日、メキシコシティーでは「母の日」にあわせて、子どもなど家族が行方不明になっている人たちによる抗議活動が行われました。
メキシコ政府は、1950年代以降に行方不明になっている人が11万人以上にのぼり、その多くは政府が麻薬組織の取締りを強化したここ15年ほどの間に行方がわからなくなっているとしています。
国際人権団体のアムネスティー・インターナショナルは「ほとんどのケースでは捜査がおざなりで、被害者が発見されることはまれだ」と指摘した上で、こうした人たちが連れ去られる過程には、治安機関が加担している場合もあるとしています。
メキシコシティー近郊に住むマリア・エレーラさんは、2008年に8人の子どものうち2人の息子が行方不明になりました。
その後、その行方を捜しに行った息子2人も姿を消し、麻薬組織などの関与を疑っています。
エレーラさんはNHKの取材に対し、「8月で失踪から16年になりますが、状況が変わることはなく、何も前に進まず、私たちは何も知らされないままです。この国に安全はありません。政府が私たちの安全のために何もしようとしないのであれば、不幸な出来事は増え続けるばかりでしょう」と話していました。
そのうえで、新たな大統領には「私たちがメキシコで置かれている状況に向き合ってほしい」と訴えました。
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