インタビューに応じるフィンランドのストゥブ大統領(30日、ヘルシンキの大統領府)

【ヘルシンキ=林英樹】フィンランドのストゥブ大統領は30日、ウクライナによるロシア領への供与兵器使用について「制限すべきではない」と語り、攻撃を容認した。そのうえで「ロシアが急に自由民主主義国家になることはなく、戦争に勝つという目的は不変」と長期支援を約束した。

同日、首都ヘルシンキの大統領府で日本経済新聞などのインタビューに応じた。ロシア領への攻撃の是非に関する質問に対し「自衛のためロシアへの攻撃に供与兵器を使うのは問題ない。使えない兵器を送るのは偽善だ」と答えた。

ストゥブ氏は3月、大統領に就任したばかり。中道右派の与党第1党出身で、ロシアに対する強硬姿勢で知られる。

ウクライナ戦争の終結には領土の確保、安全保障の枠組み、戦争犯罪人の起訴、投資ベースでの復興という「4つの観点に沿った解決を探る必要がある」と指摘。領土については「(旧ソ連から独立時の)1991年が国境という考えを支持する」と述べた。4月にはウクライナと10年間の安全保障協定を結んだ。

ロシア領への攻撃をめぐっては、英国のキャメロン外相が4日のウクライナ・ゼレンスキー大統領との会談で「ウクライナには反撃する権利がある」と語り、ロシア政府は「非常に危険な発言」と反発を強めていた。

フィンランドはロシアと1340キロメートルにわたって国境を接している。リスク対応から避難シェルターの完備やリーダー層の訓練、備蓄拡大など国全体で非常時に備える「包括的防衛戦略」をとる。

ロシアによるウクライナ全面侵略を受け、長年の中立政策を転換。2023年、北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。ストゥブ氏は国民の90%がNATO加盟に賛成しているとしたうえで「ロシアという脅威が目の前にある以上、安全保障は実存的な問題だ」と語った。

NATOが求める国内総生産(GDP)比で2%以上の防衛費目標について少なくとも27年まで基準を達成する見通しが立ったと明らかにした。ウクライナの全面侵略は「歴史上最大級の戦略的ミス。同じミスは二度と起こさないだろう」と話し、NATOが抑止力となるとの見解を示した。

核兵器を一部加盟国に配備し共同運用するNATOの核シェアリングについては「フィンランドに持ち込むと安全保障が低下する」と否定的に語った。フィンランドは現行法で領土内への核兵器の持ち込みを禁止している。

一方、米国と欧州を結ぶ大西洋の防衛を担う米ノーフォーク司令部の管轄に加わり、陸軍部隊を自国内に配備することが「全体の集団防衛として最善の策になる」との考えを示した。

ストゥブ氏は欧州連合(EU)の研究者として知られ、テレビのコメンテーターも務めていた。研究テーマは「柔軟な統合」で、「すべての加盟国が同じ防衛政策をとるわけではなく様々な形がある」と指摘する。

6月上旬に投開票される欧州議会選で右派・右翼会派の躍進が予測されるが、「穏健な中道勢力による連立となるだろう」と見通しを語った。そのうえで「EUは元々、経済的な手段で実現した政治的な統合だが、最近はより政治的になってきている」と指摘した。

欧州投資銀行(EIB)副頭取を2年半務めていた。EIBの融資対象から防衛産業が外れていたことで同産業への資金供給が進んでいない状況について「理解しがたい理由だった。今は変わりつつある。防衛は他の産業と同様に重要だという認識に変わりつつある」と語った。

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