ICJの命令後も “ラファ中心部に空爆”
パレスチナの地元メディアは24日、ICJがイスラエルに対してラファでの攻撃をただちに停止するよう、暫定的な措置を命じた直後、ラファ中心部に空爆があり、多数の死傷者が出ていると伝えています。
ガザ地区の保健当局は23日、これまでの死者が3万5857人にのぼったとしています。
国連によりますと、イスラエル軍が5月6日にラファでの地上作戦を開始してからエジプトとの境界にあるラファ検問所は閉鎖され、同じ南部にあるケレム・シャローム検問所からの人道支援物資の搬入も滞っているということです。
ロイター通信は、エジプト側ではガザ地区に搬入することができずに食料の一部が腐り始めていると伝えていて、現地の映像ではトラックの列や、腐ってしまった卵をやむをえず処分している様子などが写っています。
ICJが暫定的な措置を命じた後もイスラエル軍が攻撃を停止する兆しは見えておらず、これまで繰り返し軍事作戦を拡大する構えを示していることから人道状況のさらなる悪化が懸念されます。
米 “エジプトが支援物資搬入を約束”
アメリカのホワイトハウスはバイデン大統領がエジプトのシシ大統領と24日、電話会談を行い、人質解放に向けた取り組みやガザ地区の人道支援について協議したと発表しました。
このうち支援物資の搬入が滞っているガザ地区南部のケレム・シャローム検問所について、エジプト側が暫定的に支援物資を入れることを約束したとしています。
また、バイデン大統領は、イスラエル軍が南部ラファでの地上作戦を開始してから閉鎖されているラファ検問所について、エジプトとイスラエルの双方が受け入れられる形での開放に向けて取り組みを支援していくことを約束したほか、さらなる協議のために来週、エジプトの首都カイロに高官の派遣団を送ることで合意したということです。
国際司法裁判所 ラファ攻撃 即時停止を命じる
オランダ・ハーグにある国際司法裁判所は24日、ガザ地区南部のラファでイスラエル軍が行っている攻撃について、ガザ地区の住民に取り返しのつかない損害を与えるおそれがあるとして、イスラエルに対してただちに停止するよう求める暫定的な措置を命じました。
裁判所はこれまでもイスラエルに対して住民の集団殺害を防ぐ手段を尽くすことや、人道支援が行き渡るようあらゆる措置を講じることを、命じてきました。
しかし24日、ラファへの空爆や地上作戦で多くの住民が繰り返し避難を強いられていて、人道状況は悪化の一途をたどっているとして、イスラエルに対してラファでの攻撃をただちに停止し、人道物資が搬入されるようラファの検問所を開放することなどを、命じました。
去年10月にガザ地区での戦闘が始まって以降、国際司法裁判所がイスラエルに対して攻撃の停止を命じたのは、初めてです。
国連の主要機関である国際司法裁判所の命令には法的拘束力がありますが、裁判所には命令を強制的に執行する力はありません。
イスラエルは裁判所の判断にかかわらずラファでの作戦を継続する構えを見せていて、国際社会からの批判がいっそう高まることが予想されます。
イスラエル「南アフリカの訴えは誤りであり言語道断」
ICJ=国際司法裁判所がイスラエルに対してガザ地区南部のラファでの攻撃をただちに停止するよう、暫定的な措置を命じたことを受けイスラエル政府は24日、声明を出しました。
声明ではまず「イスラエルがジェノサイド、集団殺害を行っているとする南アフリカの訴えは、誤りであり言語道断だ」としてICJに攻撃の停止を要請した南アフリカを非難しました。
そして、イスラエルの軍事作戦は去年10月のイスラム組織ハマスによる大規模攻撃を受けた自衛権の行使に基づくものだとし「ラファで民間人の暮らしを脅かす物理的な破壊をもたらす可能性のある軍事行動を行っていないし、これからも行わない」などと強調しています。
そのうえで「イスラエルはガザ地区での人道支援活動を可能にするため努力し、法を守り、民間人への被害を可能な限り減らすために行動する」としています。
ハマス「イスラエルが決定に従うよう国際社会と国連が圧力を」
イスラム組織ハマスは24日、ICJ=国際司法裁判所がイスラエルにガザ地区南部ラファでの攻撃をただちに停止するよう暫定的な措置を命じたことを歓迎する声明を出しました。
その上で「ガザ地区北部のジャバリアをはじめ、地区のほかの場所で起きていることも、ラファと同様に犯罪的で危険だ」としてイスラエルの攻撃を非難するとともにガザ地区全体への攻撃を止めるための命令をICJに求めました。
そして、「イスラエルがこの決定に従うよう、国際社会と国連が圧力をかけることを求める」として、ICJの措置が実効性を伴うものになるよう各国に行動を求めました。
南アフリカ大統領府「命じたことを歓迎」
ICJ=国際司法裁判所に要請していた南アフリカの大統領府は24日、声明を発表し「南アフリカはICJが、ジェノサイド条約上の義務とラファの住民が置かれている困難な状況にかんがみ、イスラエルに対して直ちに軍事作戦を停止するよう命じたことを歓迎する」としています。その上で、ラマポーザ大統領が「すべての国に対し、国際法上の規定に従ってイスラエルとの関係を見直すよう求める」と述べたとしています。
また、南アフリカの外務省に当たる国際関係・協力省のゼイン・ダンゴール次官は24日、ビデオ声明を発表し「イスラエルに対して、ガザ地区内での軍事行動を停止するよう明確に求めた初めての命令であり、画期的だ」とした上で、「これは事実上の停戦の呼びかけだ」と述べ、国連や各国に対して停戦の実現に向けた働きかけを強めるよう求めました。
国連グテーレス事務総長「決定には拘束力がある」
国連のグテーレス事務総長は24日、報道官を通じて出した声明で「決定には拘束力があり、関係者がICJの命令に適切に従うものと信じている」と強調しました。
ハンユニスの住民「攻撃はガザ地区全体で停止されるべき」
NHKのガザ事務所は24日、ICJ=国際司法裁判所の判断について南部のハンユニスで住民たちに話しを聞きました。
このうちラファからハンユニスへ避難してきた50歳の男性は「攻撃はラファだけではなくガザ地区全体で停止されるべきだ。8か月も続く破壊と増え続ける犠牲はもうたくさんだ」と話し、イスラエルに対してガザ地区自体への攻撃をやめるよう訴えていました。
また、30歳の男性は「戦争が終わってほしい。われわれの暮らしは破壊され、何もかも失った。助けを必要としている」と訴えていました。
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