ミサイルで破壊されたウクライナの火力発電所を訪れたベーアボック独外相(21日)=AP

【フランクフルト=林英樹】ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪れているドイツのベーアボック外相は21日、ウクライナの防空支援に関し「現状では不十分。体制強化が喫緊に必要だ」と語った。ロシアは発電所などインフラを狙った攻撃を強める。地対空ミサイル「パトリオット」の追加供与を決めたドイツは他国にも支援を呼びかける。

過去2週間のロシア軍による発電所への攻撃で、ウクライナの総発電能力は5000メガワットから600メガワットに9割近く減った。損害額は10億ドル(約1600億円)を超える。

「送電網から火力発電所にターゲットが移り、深刻なダメージを受けている」。ウクライナ最大の民間電力DTEKのマキシム・ティムチェンコ最高経営責任者(CEO)は5月中旬、海外メディア向けのオンライン会議で惨状を語った。「機器と資金の大規模な投入がないと今夏中に再建できない」と訴えた。

ウクライナ軍は21日、ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリで、19日夜にロシア黒海艦隊の艦艇を攻撃し「破壊した」と発表した。

ウクライナ当局によると、攻撃したのは同艦隊で巡航ミサイルを搭載した最後の艦艇で「ロシアのミサイル攻撃能力を損なうことができた」と主張している。

ロシア国防省は21日、ウクライナ侵略の拠点である南部軍管区で、戦術核兵器の使用などを想定した演習の第1段階を始めたと発表した。次の段階ではロシアの戦術核を配備したベラルーシも参加する予定で、ウクライナや支援する欧米各国を威嚇する狙いがある。

地上戦では、ウクライナ東部ハリコフ州でロシア軍が攻勢を強めている。英国防省は同日、東部ドネツク州ポクロフスクと、ロシアが実効支配する中心都市ドネツクをつなぐ幹線道路沿いでも攻撃が激しくなっていると指摘。「ウクライナ軍の戦力を分断することを狙っている」と分析した。

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