ゲーム業界への新卒就職を目指す就活生を対象としたこのイベントでは,業界のさらなる発展を願うべく,出展企業の説明会をはじめとした,さまざまな企画が予定されている。このイベントに合わせ,4GamerとGame*Spark両サイトでは,各出展メーカーで活躍している現役クリエイター達に“ゲーム業界を目指す学生のためのインタビュー”を実施した。
本稿では,コーエーテクモゲームズで「三國志 覇道」(iOS / Android / PC)「妖怪三国志 国盗りウォーズ」(iOS / Android)などの開発に関わり,現在は未発表タイトルでプランナーを務めている家本あかねさんに,入社後の仕事環境や今後のキャリアプランなどを聞いている。ゲーム業界志望の就活生は,ぜひ参考にしてほしい。
なお,本記事は4GamerとGame*Sparkによって共同制作された連載記事となる。
現場から見た開発者のリアル
4Gamer:
まずは自己紹介からお願いします。
家本あかねさん(以下,家本さん):
シブサワ・コウブランドでプランナーを担当している,家本です。2020年度に新卒でコーエーテクモゲームズに入社し,今年で5年目になります。
4Gamer:
プランナーというのは,具体的にどういう仕事でしょうか。
家本さん:
そうですね……こうしたらプレイヤーに楽しんでもらえるとか,驚いてもらえるんじゃないかといったことを考えながら,ゲームを調整していく仕事でしょうか。例えば,配属されて最初に担当したレベルデザインでは,ゲーム中に選択できるルートを設計することで,プレイヤーの感情を揺さぶるような体験を作り出していきました。
4Gamer:
それは,ご自身で繰り返しプレイしながら試行錯誤していくわけですよね。となると,ご自身のゲーム経験も重要になりそうです。
家本さん:
そうですね。自分自身,子どもの頃からずっとゲームを遊んできていたので,その経験は多少なりとも生きていると思います。
4Gamer:
なるほど。では,元からゲームがお好きだったんですね。ゲーム開発に携わるようになってみて,いかがでしょう。やりがいを感じますか。
家本さん:
やっぱりゲームが完成したときの達成感は大きいですね。とくに初めてスタッフロールに自分の名前が載ったときは,すごく感動しました。プレイした友達が写真を撮って送ってくれて,その写真を家族に広めたくらいです(笑)。ただ,これは毎日の小さな積み重ねの結果でしかなくて……。
4Gamer:
小さな積み重ね,ですか。
家本さん:
はい。例えば自分の考えた仕様がプログラムになり,発注したキャラクターが画面の中で動いているのを見るのは,すごく楽しいことなんですよ。そうした小さな達成感を日々感じられる今の環境には,とてもやりがいを感じています。もちろん開発は時間との戦いですので,辛いこともありますけど。
4Gamer:
なるほど。それはゲーム開発ならではの面白さかもしれないですね。
家本さん:
はい。ゲームはデザイン,3Dモデル,モーション,プログラム,シナリオ,音楽,ボイス,UIといった,さまざまな要素の組み合わせから生まれる総合芸術です。それらが生み出される現場を間近で見られるのは,本当に得難い経験だと思います。
4Gamer:
ちなみに自分が作ったゲームを,プライベートで遊んだりもするのでしょうか。あるいは発売後に,プレイヤーの反応が気になったりとか。
家本さん:
それはもちろん。「三國志 覇道」は少しだけ関わったタイトルですが,今も毎日遊んでいます。SNSなんかを見て,その反応に一喜一憂したりとかも。狙いどおりの反応で嬉しい気持ちになることもあれば,思わぬところを指摘されて驚かされたりといったこともありました。ただ,関わったタイトルがまだまだ少ないので,これからに生かしていきたいと思います。
4Gamer:
職場の雰囲気はいかがですか。やはり家本さんのようにゲーム好きが多いのでしょうか。
家本さん:
ゲームはもちろん,アニメや漫画,映画など,エンタメ全般が好きな人が多いと思います。なので,中にいると自然に引き出しが増えていく印象です。そのほかの共通点でいうと,真面目な人が多いくらいでしょうか。
4Gamer:
家本さんご自身は,ゲーム開発者はゲーム好きであるべきだと思いますか。
家本さん:
ゲームが好きなことは,開発者にとって何より大事なんじゃないでしょうか。現場でも「ここはあのゲームのようにしよう」「手触りはこのゲームっぽくしたい」といった会話をよくしますし,ある種の共通言語になっています。そこはコーエーテクモに限らず,ゲーム開発には必要な資質だと思います。
4Gamer:
ということは,一つのジャンルを深く遊んでいるよりも,浅くとも広く遊んでいるほうがいいですか。
家本さん:
そうですね。自分の経験に照らし合わせても,何か一つではなくいろいろ遊んでいるほうが役立つように思います。
5年目の地点から見た,これからのキャリア
4Gamer:
家本さんは現在,プランナーのリーダーを務めているそうですが,それによって仕事への向き合い方は変わりましたか。
家本さん:
もちろんです。まだ特定のパートのリーダーに過ぎませんが,今は自分自身がタスクをこなすのではなく,チームメンバーを信じて任せることの難しさを,日々痛感しています。
4Gamer:
視野が広がったということでしょうか。
家本さん:
そうですね。この5年で大分視野が広がったように思います。学生の頃は自分のことで精一杯でしたが,チームで仕事をするようになって,自分のタスクの前後には,必ずほかの人のタスクがあるのだということを意識するようになりました。
そしてリーダーになった今は,ただ目の前のものを面白くするだけじゃなく,チーム全体がどう動いて,スケジュールを守りながらどう成果を出していくのかに,目が向くようになりました。
4Gamer:
マネジメントの視点が加わったということですね。スケジュールの制約は,やはり厳しいのでしょうか。
家本さん:
開発現場では,あれは入れたい,これも入れたい,ここは調整したいというのが,無限に湧いてくるものですから。そこはスケジュールと照らし合わせて,どうしても取捨選択が必要になります。
4Gamer:
ときには残業したりとかも?
家本さん:
どうしてもやりたいことがあって,自主的に残業することはあります。でも強いられて残業するようなことは,今はもうないですね。昔は何日も徹夜してみたいな話を聞きますが,今はどこまでやるべきか,上がジャッジしてくれますので。
4Gamer:
……正直,気軽に残業できた昔が,ちょっと羨ましくないですか?
家本さん:
羨ましいというか,あこがれは感じます(笑)。先輩達の武勇伝を聞いていると,とくにそう思います。ただ,私の同期やもっと若い世代でも,もちろん全員ではないですが,そういう人は多いみたいです。ダメなんですけどね(苦笑)。
4Gamer:
ということは,世代ではなく個人の気質なのかもしれないですね。家本さんは,ご自身のキャリアとしては,今後どのような道に進みたいと考えていますか。
家本さん:
今はプロジェクト全体をまとめるリードプランナーを目指しています。段階として,その次がゲームの面白さに責任を持つディレクターになりますが,いずれはそうした立場になって,世界で一番のタイトルを世に送り出したいですね。
4Gamer:
コーエーテクモのようなパブリッシャですと,開発やマーケティングなど特定の分野に特化したスペシャリストか,あるいはそれらを横断的に見るゼネラリストを目指すかでも違うように思いますが,ご自身ではどちらが向いていると思いますか。
家本さん:
そうですね……今はまだ面白いゲームを作ることに集中したいと考えていますが,人を管理する仕事にも面白さを感じているので,将来的にはプロデューサーのような,より広い視野を持った立場にも立ってみたいとも思います。ただ……。
4Gamer:
ただ?
家本さん:
ただ,今のプロデューサー陣を見ていると,とにかくファンの皆さんの気持ちを汲み取るのがうまいので,何か自分の根本的な部分を変えないとできない仕事のような気がしているんです。なので,まずは自分のやれること――ゲームの面白さを追求することで,経験を積んでいきたいですね。
4Gamer:
先ほどは“世界で一番”と言っていましたが,将来的にはどんなゲームを作ってみたいですか。
家本さん:
そうですね……アクションRPGやシミュレーションRPGが好きなので,やっぱりそういったジャンルには挑戦してみたいです。マルチプレイゲームもいいですね。あと,画面の中でいろいろなキャラクターが動いているのが好きなので,いろいろなIPのコラボレーション企画ができたら素敵ですね。
4Gamer:
コラボというと,例えば「スーパーロボット大戦」とか「大乱闘スマッシュブラザーズ」のような?
家本さん:
ええ。「妖怪三国志 国盗りウォーズ」の開発に関わったことがあるので,調整や監修の大変さは分かっているつもりですが,それは乗り越える価値のあるハードルだと思うので。そのためにも,まずは経験を積んでいかないとですけど(笑)。
4Gamer:
ちなみに,家本さんが企画書を出したりはできないんですか。
家本さん:
若手であっても企画を出すことはできます。ただ,売上や市場の分析なども必要になってきますし,若手がその領域まで踏み込むのは,現実的にはなかなか難しいですね。ただチャンスはあるので,いつかは挑戦してみたいです。
4Gamer:
分かりました。では最後に,今現在ゲーム業界を目指している学生の皆さんに,何かアドバイスをいただけますか。
家本さん:
まずは何でも楽しんでほしいですね。ゲーム作りは大変な仕事ですが,「楽しいゲームは楽しく作らないと楽しくならない」という,弊社の早矢仕(コーエーテクモゲームス取締役副社長の早矢仕洋介氏)の言葉は,本当にそのとおりだと思うので。就活も仕事も前向きに捉えて,レベリングに励む気分で進んでほしいと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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