4Gamerでは新シーズンの開幕に先立ち,新レジェンド「オルター」の生みの親である,「Apex Legends」開発チームのJaclyn Seto氏(Writer/Alter Narrative Writer),Ian Holstead氏(Senior Software Engineer/Alter Designer)にオンラインでインタビューする機会を得た。
彼女のビジュアルやヴィラン(悪役)としてのストーリー,特徴的なアビリティはどのように構築されていったのだろうか。さまざまな質問に快く,時に冗談を交えながら回答してくれたので,最後まで読み進めてもらえれば幸いだ。
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[2024/05/04 02:00]- キーワード:
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,新たなレジェンドであるオルターのローンチにあたり,現在の心境を聞かせてください。
Ian Holstead氏(以下,Holstead氏):
とにかく興奮しています(笑)。「楽しみで楽しみで待ちきれない」って感じでしょうか。レジェンドのデザインを制作する過程は非常に楽しいものでしたし,プレイヤーの皆さんにオルターを楽しんでもらえる日がいよいよ来ると思うと,とても嬉しいですね。
Jaclyn Seto氏(以下,Seto氏):
私も,本当にワクワクしています。ゼロからライティング(物語の執筆)に携わったレジェンドは,オルターが初めてなんです。その意味でも嬉しいですし,久しぶりのヴィラン系レジェンドの登場ということもあって,プレイヤーの皆さんの反応が楽しみです。
4Gamer:
5月7日の登場が待ち遠しいですが,開発自体はいつスタートしたのでしょうか。
Seto氏:
今となっては……めっちゃ昔?(笑) もうそれくらいに感じるかな。
Holstead氏:
そうだね(笑)。「Apex Legends」に登場するレジェンドの開発は,基本的に「レジェンドキット」と呼ばれるものを作成するところから始まります。ここでいろいろな案であったり,オプションであったりを試しながら,最終的に1つに絞るという手法を用いています。
もちろん,「アイデアは良かったけど,実装してみたら全然ダメだった」なんてこともありますから,トライ&エラーの繰り返しです。このキットでテストし始めた……というポイントから考えると,もう1年以上は間違いなく経っているんじゃないかな。
Seto氏:
ええ,私がプロダクトにジョインしたのは去年(2023年)の3月です。
4Gamer:
では,オルターも「先に能力が決まってから,ストーリーを書く」という形だったと。
Seto氏:
そうですね。ある程度,プロトタイプが定まってきた段階でストーリーを作り始めます。「どのようなプレイフィールのレジェンドか」「どのようなキャラクター性を持たせてほしいか」などを聞いて,それをベースにライティングを行う形です。
Holstead氏:
「本当にいい仕様ができた」と確信を持てたとき,そこで初めてライティングに入ってもらいます。レジェンドの「ゲームデザイン」と「ストーリーデザイン」,双方がマッチしていなければ,やはり“良いレジェンド”は生まれませんからね。
4Gamer:
なるほど。開発中のターニングポイントや楽しかった出来事を教えてほしいです。
Holstead氏:
ゲームデザインの面では,大きなターニングポイントが1つありましたね。現在は戦術アビリティとなっている「ブリーチングポータル」(Holstead氏の表現)ですが,元々はアルティメットとして開発されたものでした。
ですが,アルティメットとしてテストすると,どうもゲームプレイにフィットしなくて……。マッチ中に使える回数も限られますし,意味のある,効果的なアルティメットにできなかったんです。
そこで「いっそのこと,戦術アビリティにしてみる?」ということでテストしてみると,非常に良いプレイフィールになりました。テストの結果を受けて,現在の仕様に落ち着いたんですよ。
Seto氏:
ライティングの面だと,すでにオルターは「完成したレジェンド」(筆者注:まだ明らかになっていない秘密も含むキャラクター性の意味合いだと思われる)ですが,初期は現在の形とはまったく別のキャラクター性を持っていたんです。
そのコンセプトですが,今後のレジェンドに使うかもしれないので今日は秘密です(笑)。ただ,「まったく別のプレイフィール,キャラクター性を持っていた」ということはお伝えしておきましょう。
4Gamer:
とても気になりますね……。“原始のオルター”を知ることができないのは,とても残念です(笑)。
これから我々の前に姿を現す,“完成したレジェンド”のオルターですが,いわゆる悪役(ヴィラン)的な要素を持っていると聞いています。これは,どのようにして構築されたのでしょうか。
Seto氏:
開発の初期段階から一貫して,「ヴィランのレジェンドを作る」というコンセプトがありました。とくに“ブリーチングできるポータル”というオルターの象徴的な能力は,「敵はオルターから逃げられない」「安全な場所を安全ではなくする」といった一種の恐怖を思い起こさせるものです。
そこを起点にして,パーソナリティやストーリーを作っていきました。その後,作り上げたキャラクター性に合わせて,ボイスライン(台詞)なども執筆しました。
Holstead氏:
オルターの魅力的なストーリーでは,Jaclynに大変お世話になりました。ただ,我々のチーム一丸となって開発したレジェンドであることも,ぜひ言わせてください。アニメーションの制作なども,非常に楽しいものでした。
Seto氏:
オルターのビジュアルを担当してくれたXiao Yang(Senior Concept Artist)は,本当に素晴らしい仕事をしてくれました。ヴィランのレジェンドであるからには,やはり“ヴィランたる姿”ではないといけません。
どのような能力やストーリーがあったとしても,悪役ならではの迫力というか,“そういうもの”が必要ですからね(笑)。Xiaoには本当に感謝しています。
4Gamer:
ビジュアル,マジで最高です(笑)。
それでは,オルターのバックボーンについても聞かせてください。たとえば,ヴァルキリー(今原カイリ)が日本的なバックボーン,レズビアンのセクシュアリティを持っているように,「Apex Legends」のレジェンドは“我々の世界”の国や地域,性的マイノリティをモチーフとした人間味のあるキャラクター性が大きな魅力です。
オルターは「中華圏をモチーフとしたキャラクター性」を持っていますが,このようなレジェンドを制作するにあたり,工夫したポイントはありますか。
Seto氏:
もちろんです! お答えしますよ(笑)。
工夫したポイント……とは少し離れるかもしれませんが,“中華圏をモチーフにしたヴィラン”というレジェンドを生み出すにあたって,正直に言えば怖い部分もありました。どうしても,そこにはリスクが付きまとうからです。
ただ,我々の世界に目を向ければ,国籍や人種,地域に関係なく,善人も悪人も満遍なく存在します。それは,アウトランズでも変わらない事実なんです。こうしたレジェンドに取り組むことができたのは,とても価値のある時間でした。
また,オルターには中華圏の要素だけでなく,アジア人としてのステレオタイプも盛り込んでいます。分かりやすい点を言えば,“ドラゴン・レディ”※とかですね。
オルターの髪は奇抜な色ですが,これは「世の中に反抗する意思」のモチーフです。もちろんファッション的な側面もありますが,やはり「髪を染める」という行為は,とくにアジアにおいて「反抗の意思」を示す手段の一つですから。
※ドラゴン・レディ:主に欧米で用いられる,アジア人女性のステレオタイプ。神秘・魅惑・狡猾・傲慢などのイメージを含むが,全体的には“激しい気性を持つ女性,勇ましい女性”といった感じの意味合いだろう。余談だが,米空軍が運用する高高度偵察機「U-2」の非公式な愛称として用いられており,Web検索ではこちらばかり出てくる。
4Gamer:
私も以前,髪を染めていたことがありました。仰るとおり,“差別化でアイデンティティを築きたかった”時期でした(笑)。
「差を作る」という点で,お聞きしたいことがあります。レイスやアッシュといった次元に干渉するレジェンドが存在していますが,オルターはどのように差別化を図ったのでしょうか。
Holstead氏:
ゲームデザインの観点から見ると,表面上は「ポータルを作る」という点でレイスやアッシュと共通しています。ですが,実際のゲームプレイを通して見ると,プレイヤーはまったく異なる使用方法で用いることでしょう。これから皆さんが,どのように“オルターのポータル”を使っていくか。非常に楽しみにしている部分ですね。
Seto氏:
確かにレイスやアッシュ,オルターは次元に干渉する能力を持っています。これは設定の話になりますが,“次元に干渉する技術・手段”はそれぞれ異なっているんです。
そのため,ビジュアルや視覚的な表現でも差別化を図っています。一見,同じように見えるかもしれませんが,目を凝らせば違いに気づいてもらえるはずです。UIチーム,VFXチームに感謝ですね。
4Gamer:
ここまではオルターの“ペルソナ”についてお聞きしてきました。一方,オルターの“シャドウ”――ボツになった部分で「これは面白かった!」というものはありますか。
Holstead氏:
今回はボツになったけれど,未来のレジェンドになるかもしれないから,あまり話せることはないんだよね(笑)。
ただ,そうだね。答えられる範囲だと,パッシブアビリティのテストで6つくらいの項目を試していたんだけど,その中に「戦術アビリティで移動中,周囲の敵をスキャンする」というものがありました。我々が求めるインパクトには達しなかったから,ボツになっちゃったんだけど。
ただ,これは少し形を変えて,オルターに実装されています(筆者注:レジェンドアップグレードを指していると思われる)。このような発想の転換は興味深いポイントでした。
4Gamer:
ここまでさまざまなお話を聞かせていただきましたが……ズバリ,オルターは「強いレジェンド」ですか(笑)。
Holstead氏:
あはは(笑)。こればっかりはどうにも分からないです。我々の内部テストでは,もちろんうまく進んでいますが,ローンチ後の皆さんの反応がどのようなものになるか,それは正直に言って分かりません。メタになるかも未知数です。
ただ,「現在の環境に刺激を与える存在である」ことは間違いなく言えます。起爆剤のような。
新たなレジェンドは,プレイヤーの皆さんに興奮と刺激をもたらしますが,中でもオルターはスキルレベルを問わず,楽しんでいただける存在だと考えています。
彼女が持つブリーチングポータルの能力は,「Apex Legends」に新たな遊び方をもたらしてくれるでしょう。プレイヤーの皆さんがどのようなクリエイティブなプレイスタイルを作り出すのか,非常に楽しみにしています。
4Gamer:
本日は貴重なお時間をありがとうございました。
最後に日本のファンやプレイヤーに向けて,ぜひメッセージをいただければと思います。
Seto氏:
「Apex Legends」をプレイしてくれて,本当にありがとうございます!
私たち開発チームは,日本の皆さんが発信されるアートやコスプレなどを日頃から拝見していますし,とてもエネルギーをもらっています。新レジェンドのオルターもガッツリ楽しんでいただけたら嬉しいです。
Holstead氏:
言いたいことは,Jaclynがすべて言ってくれました(笑)。ぜひオルターを楽しんでください!
4Gamer:
ありがとうございました。
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