本作は,韓国のインディー開発チームであるAl Fineが2019年12月20日にアーリーアクセスを開始し,長らくアップデートを続けてきたシングルプレイ用ゲームだ。デッキ構築の要素を盛り込んだローグライクRPGであり,プレイヤーは4人のパーティメンバーのカードやアイテムを集めながら,プレイのたびにランダム生成されるステージを進み,強大なボスたちを撃破していく。
最大の特徴は,この手のRPGとしては珍しく,シナリオとキャラクターに非常に力が入っていること。しっかりとしたメインストーリーが楽しめるうえに,パーティメンバーに選べるプレイアブルキャラクターは20人も用意されていて,リプレイ性も高い。20人全員に,好感度での会話シーンが用意されているなど,キャラクター1人ひとりの掘り下げもバッチリだ。
ゲームシステム的には非常に複雑で,ローグライクらしく死んで覚えるべきことがとても多い。プレイヤーの知識と経験がとにかく重要であり,とくにボスは,攻略ギミックを理解しないと太刀打ちできない強敵ばかり。しかし,繰り返し挑戦してプレイヤー自身の経験を蓄積することで,どんどん楽になっていく。ローグライクなのである程度は運も絡むが,それ以上にパーティやデッキの構成,臨機応変な対応が求められるバランスが秀逸だ。
デッキ構築型となると,最強のデッキを作ってコンボをキメて……といったゲームが多いが,本作はコンボ要素は薄め。というか,パーティメンバー同士のカードのシナジーが薄いので,あまりコンボにならない。そのぶん,キャラクター1人ひとりの役割分担が必要なので,「強いデッキを作る」というよりは,「パーティ全員でボスを倒し切るための要素をデッキに詰め込む」といった感じだ。
単純な話,強いからといってアタッカーのカードをデッキに詰め込みまくると,敵の攻撃を受けてもらうタンクや,HPを回復するヒーラーのカードが引きにくくなって,あっさり壊滅する。安定して敵を倒すために,どのぐらいの配分で各キャラクターのカードを用意するかといった感覚が求められるわけだ。
ゲームの難度はノーマルでも歯ごたえがあるが,より簡単にストーリーを楽しめる「希望」モードなど,救済手段も用意されている。
逆に,難度をハードにすると,敵のHPが上がったり,倒れた仲間の蘇生回数に制限がついたりするだけでなく,敵によっては行動パターンまで変わり,大幅に難しくなる。ターンを終えるたびに大変なことになる死闘を楽しみたい人は,最初からハードで遊んでみてほしい。
筆者は本作をハードだけで遊んで,DLC以外のコンテンツを完走している(アーリーアクセスのβ版で先に遊べた)が,「戦闘バランス本当によくできているな……」と最後まで感心しっぱなしだった。散々悲鳴もあげたけど。
なお,本作は正式リリースの直前,4月26日にバージョン1.0のアップデートが行われている。もともとはこの日が正式リリース予定日だったが,セールの関係で5月3日に日程が変更され,アップデート自体は予定どおり行われた形だ。アーリーアクセス中,1.〇〇や2.0のアップデートがあたっていたのでちょっとややこしいが,今回の正式リリースを節目に,改めて「1.0」に設定したようである。
これまで,本作の紹介記事は何度か掲載しているが,そのころから今の1.0に至るまで,エンディングまでのコンテンツが実装された以外にも,さまざまな改善が行われた。
例えば,特定のストーリー進行中,全滅時にリトライが可能になって,「せっかく育てたのに運悪くあっさり死んでしまった」みたいな展開に保険がかけられるようになった。また,前の周回で手に入れた装備を指定して作り,パーティメンバーにマッチしたものを入手できる仕組みも増えるなど,高難度にチャレンジしやすくなる調整が行われている。
以前は割と微妙だった日本語ローカライズの品質も,非常によくなった。
筆者は本作が相当好きなので,大変な贔屓目であるが,もはや今のクロノアークに人におすすめできない要素はない。
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- PC:クロノアーク
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- 編集部:御月亜希
DLCについても触れておこう。サマートワイライトは,海がモチーフのDLCで,一部のキャラクターに水着バージョンのスキンが追加される。水着バージョンでのアニメーションカットインも用意され,新しいスキルや装備も登場するようだ。
この世界で海? 水着? とだいぶ戸惑うが,肌色が増えるぶんにはうれしいのでヨシ。ついに完成したクロノアークを,水着と一緒に楽しもう。そして全滅するがよい。
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