2024年8月28日と29日,Web3カンファレンス「WebX 2024」が都内で開催された。ビジネス的な側面の強いイベントだが,その中で行われたセッション「世界で勝ち抜く:現Web3業界で求められるニーズと事業戦略」の内容をお届けしたい。


●登壇者
  • Nepier Labs CEO 小副川祐輔氏
  • Neoclassic Capital Steve Lee氏
  • Slash Vision Labs CEO 佐藤伸介氏
  • INTMAX Co-Founder 藤本真衣氏
  • MC:Crypto Baby氏

左からCrypto Baby氏,小副川祐輔氏,Steve Lee氏,佐藤伸介氏,藤本真衣氏

 日本の国家戦略の一つとしても採択されているWeb3。技術の発展や産業応用の推進が大きな狙いだが,グローバル社会での競争力を養うことも欠かせない要素の一つである。では世界でどう勝ち抜くのか,その事業戦略が本セッションで語られた。

 最初のテーマは「グローバルでやっていく中で,各社がどういう戦略を持ってやってきたか」だ。
 DeFiプロジェクトである「Nepier Finance」を7月にローンチした小副川氏は,大きな競合に勝つために,別の巨大な企業を味方につけて,開発協力を得るといった方針を取ったという。


 投資家であるLee氏は,日本のプロジェクトが海外で伸びるために,どういった戦略を取るべきなのかを分析した。
 日本は国内市場が強い国なので,日本の企業は国内ユーザーにフォーカスする傾向があるとのこと。そうではなく,スタートする前からグローバル戦略を考えていく必要があるそうで,暗号資産でうまくいくためには,海外のインフラストラクチャーと積極的にパートナーを組んで,海外へのプレゼンスを増やしていくことが重要だと述べていた。


 暗号資産決済を行っているSlash Vision Labsの佐藤氏は,日本人である我々は,やはり日本のマーケティングが一番強いという前提のもと,まず日本市場で足場を固める必要があると語った。日本でのプレゼンスを発揮することで,海外からアプローチが来るというわけだ。
 日本の事業者が海外展開を難しく思うように,海外の事業者も日本展開を難しく感じている。そこで互いの強さを生かして協力することで,海外展開を狙う戦略だ。


 イーサリアムのレイヤー2で事業を行うINTMAXの藤本氏は,コミュニティをどれだけ魅了できるかの重要性を語った。技術的革新に自信があったとしても,知られなければ意味はない。情報発信やコミュニティとの交流を重視することで,認知拡大を図ることが大切だという。
 また実際に現地に足を運び,何が必要か,何が求められているかを見極めることも重要だそうだ。ニュースで見た情報だけでは,実態までは分からないとのことである。


 では有名なプロジェクトの共通点や,成功要因をどう分析すれば良いのか。
 Lee氏は,プロジェクトがうまくいっているかの判断ポイントは,コミュニティ作りができているかどうかだと述べた。Web2ではコミュニティは投資判断に影響しなかったが,Web3ではコミュニティを持っているか,あるいはコミュニティを作る能力があるかに注目される。
 また,もう一つはチーム作りだとLee氏は指摘する。日本人だけのチームが悪いわけではないが,グローバルに展開できるスピード感が必要な業界なだけに,チームもグローバル化している方が有利とのことである。
 違う文化を持つ人とチームを組むことは,それなりの労力やコストがかかるが,違う文化で異なるスキルセットを持つ人達とチームを組むことは,長期的な目線で見れば,会社として,またプロダクトとして良いものが作れる可能性が高いとも話していた。


 最後の話題は,Web3市場で成功を収めるための長期的なビジョンについてだ。
 佐藤氏は,暗号資産やWeb3に関わっていないユーザーをどう取り込めるかが,これからの勝負になってくると指摘した。Web3界隈はマイノリティであるという自覚を持ったうえで,Web3界隈以外の人に,どうやって使ってもらえるかを考えていかないといけない。ブロックチェーンを使ったアプリケーションを,Web3を知らない人にも自然に使ってもらえる状況を作り出していく必要があるとのことである。


 いくつかセッションを聴講したが,共通して話題に上るのは「生活に自然な形でWeb3が溶け込んでいくことの重要性」だ。要するに生活に必要なもの,あるいはあると便利なものとしての地位を確立する必要があるわけだ。今や電子決済が当たり前になったように,Web3もその道筋を辿るのかもしれない。

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