Web3カンファレンス「WebX 2024」の2日目(2024年8月29日),「官民共創:web3など新興技術の推進のための政策の在り方」と題したセッションが行われた。


 経済産業省から課長補佐の板垣和夏氏と競争環境整備室長の池田陽子氏,金融庁イノベーション推進室からは課長補佐である清水秋帆氏が登壇。モデレーターは,板垣氏が務めていた。

板垣氏
 板垣氏は経済産業省でWeb3の担当を3年ほど務めており,池田氏は同省で競争環境の整備に取り組んでいるという。清水氏は,金融庁で事業者から法律相談を受け付ける「FinTechサポートデスク」を担当している。

 はじめに,各省庁のWeb3における役割が紹介された。池田氏は以前,内閣官房企画官としてスタートアップ支援に取り組んでいたそうだ。とくに岸田政権はスタートアップに注力しており,2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を発表している。内閣官房は全体を見ているので,窓口的な役割を果たしていたという。

 清水氏は金融庁の業務について説明した。金融規制の企画・立案・監督・検査をしているので,暗号資産や電子マネーが関わってくるそうだ。その中で清水氏が所属するイノベーション推進室では,国内外のステークホルダーと対話し,監督部署と事業者の橋渡しをしているとのこと。

 そして板垣氏は,経済産業省を産業振興を担当する役所だと語った。規制を管轄する金融庁と相談しつつ税制改正の機運を高めたり,LPS法を暗号資産にも投資できるように変えたり,コンテンツ産業やスポーツ産業におけるWeb3のユースケースの創出を支援したりしているそうだ。

 続いて,Web3業界からの要望が多い「税制改正」「法改正」の話へ。板垣氏は,このような要望について「政府の立場からすると重たい」と語り,池田氏と清水氏に話を振った。

池田氏
 池田氏は,偉い人に話を通せば制度を変えられるわけではなく,重要さのエビデンスが求められると指摘した。清水氏はこれに同意し,業界外のステークホルダーからどう見えるか,社会的なコンセンサスが得られるかが重要であり,分かりやすいユースケースが必要だとした。

 次はセッション名にもある「官民共創」がトークのテーマになった。書籍「官民共創のイノベーション」の著者でもある池田氏は,イノベーションの社会実装に役立つ仕組みとして「規制のサンドボックス制度」を紹介。これにより,規制によって実証実験が困難な場合に,限定された空間での実験が認められるそうだ。

清水氏
 また清水氏は,民間の事業者の実証実験を金融庁が一緒に行う「FinTech実証実験ハブ」も「規制のサンドボックス制度」と並行して候補に入れてほしいと語った。

 板垣氏は,「官民共創」において民間の意見を取り込むことが重要だと指摘した。行政における既存のプロセスでは,審議会の委員や業界団体から話を聞くことが多いが,それだけでは見えてこないものがあるので,できるだけ個社からも話を聞きたいとのこと。

 最後は,変化のスピードが速い業界における「人材育成」に言及。池田氏は,自身のチームでは出向者が増えてきており,官と民を分けるのではなく,人材の流動性を高めていかなければならないと語る。
 清水氏も「人材を育成する仕組みを整えるのが理想だが,現状は出向者や民間の事業者と協力していくしかない」とこれに同意し,板垣氏は「民間の人と思いを同じくすること」が重要だと述べ,セッションを締めくくった。


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