「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです

 「小さな生き物達がけなげに動き回り,それがエスカレートしていって最後にはえらいことになる――という様子を眺められるゲームがしたい。だが操作はあまりしたくない」という人は,今回紹介する「(the) Gnorp Apologue」を試してみるといいかもしれません。



 (the) Gnorp Apologueは,謎の小さな生き物達を導いて,謎の“岩”をひたすら攻撃して掘削するというPCゲームです。操作は主にマウスのクリックで,基本的には画面を眺めたり放置したりして楽しむ,いわゆるクリッカーゲームですね。生き物達を強化することでバトルは激化し,最初は地味だった画面はぐちゃぐちゃのビカビカ,つまりド派手になります。それを眺めて「こりゃたまりませんな……」とうっとりするゲームと言えるでしょう。


 そんな本作は2023年12月にリリースされ,2024年6月に日本語でも遊べるようになりました。ありがたき哉。シンプルなゲームですが,ゲーム市場の調査・分析などを行うGameDiscoverCo(※外部リンク)によれば,リリースから約1か月で12万本以上を販売したのだとか。すごいっすよね。本稿執筆時点でSteamレビューは5400件以上を集め,“圧倒的に好評”(全てのレビュー)を獲得しています。



小さなグノープ達 vs. 岩


 (the) Gnorp Apologueは,ノルウェーを拠点とするソロ開発者・Myco氏が開発したタイトルです。GameDiscoverCoでMyco氏自身についても言及されていますが,少なくとも2024年1月の時点で,20代の開発者のようですね。

 本作はピクセルアートを採用した,サイドビューで展開するタイトルです。画面の中では「グノープ」と呼ばれる小さな生き物達がシャカシャカと動き回り,岩をあらゆる手段で掘削していきます。岩を掘削して吹き飛んだ「カケラ」を一定以上の高さに積み上げること,そして積み上げながらも,そのカケラを集めることが,グノープ達の主な仕事です。

目のある頭部に足だけ――といった容姿のグノープ

かなり序盤の,シンプルな画面です。基本的にグノープ達は岩の左側から攻撃するので,岩から弾けたカケラは右側に積まれていきます

 岩のカケラは,本作でメインとなる資源です。これを使ってグノープ達の住む家や訓練場のような建物などを建築したり,グノープ達の能力をアップグレードしたりできます。攻撃手段はプレイヤーの導きかた次第ですが,たとえば自らの身体を使った頭突きから,弓矢,毒のような液体,果てはミサイルまでと,さまざまです。もちろんカケラ回収の手段もいろいろあります。

岩を燃やしてダメージを与えたり,凍らせて一時的に与ダメージを2倍にしたり,みたいな

 繰り返しになりますが,相手は岩です。ただ“岩”と言われても困ると思いますが,これが本当に岩なのだからしようがありません。岩も岩で基本的には(岩なので)動きませんが,謎の能力で自らから出たカケラを引き寄せて再生します。引き寄せる力は,グノープが積み上げたカケラの高さや,プレイヤー側が上げていく後述の「ティア」に応じて高まっていくので,これに負けないよう,グノープ側も攻撃力をどんどん上げていかなくてはなりません。

画面左に与ダメージを示す白いバーがいくつかありますが,一つだけ赤いバーがあります。これが,岩が“反撃”の形でカケラを引き寄せる力です。カケラが多く積まれているので,引き寄せの力がほとんど与ダメージを相殺するほどに高まっています


岩攻撃とカケラ回収の効率を上げて,放置


 ゲームの流れを簡単に紹介しましょう。

 ゲーム(本作は再スタートを繰り返す作品なので,便宜上,以下“ラン”と呼びます)の開始直後はグノープがいないので,プレイヤーが自ら,マウスクリックで岩を叩いて掘削します。そして出てきたカケラを(やはりクリックで)動かして,最初から用意してある「カケラ倉庫」に運びます。


 カケラが溜まったら,それを使ってグノープの家を建てます。家を建てるとグノープが住み着くので,それぞれにプレイヤーが役割を与えて働かせるわけです。建築コストは少しずつ上がりますが,家は建てれば建てるほど良い(多くのグノープを得られる)施設ですね。

家はやがてマンションのような高層の建築物になります

 家以外の施設は,グノープに仕事をあてがう場所がほとんどです。それらの施設ももちろんカケラを消費することで建てられます。
 たとえば「配達センター」ではグノープを「ランナーグノープ」(カケラをカケラ倉庫へ運ぶ役)に,「ゴッツンクラブ」では「ゴッツングノープ」(カケラに頭突きで攻撃する役)に,ぞれぞれ変えられます。このように,グノープを増やして特定の施設に割り当てて役を与える――というのがグノープ運用の基本と言えるでしょう。

ランを進めると,岩の弱点を分析する施設や,ミサイル発射基地のような場所も作れるようになります

 プレイヤーは上記のようにして,岩への攻撃力と,カケラの回収力の両方を高めていきます。マウスクリックでの攻撃や回収は高が知れていますし,使えるだけのカケラが溜まるまではとくにやることがないので,あとは眺める,つまり放置です。ゲームを最小化すればGPUの負担を下げられますし,ずっと眺めていたい場合は,ゲームが備えているスクリーンセーバーモードを使用することもできます。

激しくなっていく画面にうっとり

 さて,岩の掘削でカケラを積み上がり,その高さがピークに達すると「ギョウシュクイベント」が発生します。積まれているすべてのカケラを岩が一気に引き寄せるという,ド派手なイベントですね。
 このイベントを経ると,画面下部に表示された,積まれた岩の高さを表すゲージのティアが一つ上がって,岩が強くなります。端的に言うと,このティアを10まで上げた状態でギョウシュクイベントを発生させると,ゲームクリアです。

ギョウシュクイベントでカケラの山が小さくなっていく様子です。なお1回のギョウシュクイベントにつき一つ出現する「サイベリウム」という,パワフルなアップグレードをアンロックできる希少で特殊な資源もあります

 「ゲームクリアです」などと書きましたが,ティアが上がれば岩は強くなり,カケラを引き寄せる力もかなり強力になるので,簡単にはいきません。大きなダメージを与え続けて岩を掘削しないと,積むヒマもなくカケラを吸い寄せられてしまうのです。
 とういわけで,グノープ側もより強くなれるように用意されているのが,「プレステージ」「タレント」です。


タレントの組み合わせ(ビルド)で対岩力を強化


 “対岩力”は,良い言葉がなくて筆者が勝手に作った言葉なので気にしないでください。1度しか使いませんが。

 本作ではランを中断し,「時間当たりのカケラの回収率を高めることで溜められるゲージ」に応じたポイントを得て,ランを再スタートする仕組みがあります。これがプレステージです。

(このランでは)画面上部にある“2”が,回収率を高めたことによって得たポイントです。プレステージを行うと,これをタレントポイントに変換できます

 プレステージすることでランは最初(ティアは0)からとなります。その代わりに,プレステージによって得た「タレントポイント」を消費してタレントをアンロックし,グノープを強化したり,能力を変化させたりした状態で,新たにランを始めることができます。

タレントの一覧です。本作の説明文はどれもちょっぴりお茶目

 タレントはランの開始時に,好きなようにポイントを割り振って選べます。一度割り振ると途中で変更はできませんが,プレステージなどでランを再スタートする場合は振り直すことができます。

 タレントで得られる恩恵はさまざまです。大雑把に紹介すると,たとえば「家をいくつか建てると追加で1軒得る」「ゴッツングノープがコンボを出す確率が上がる」「岩の再生を邪魔する」「火によるダメージをn倍にする」「ガトリングやライフルの球を矢にする」などがあります。

なんとなく,銃弾をすべて矢に置き換えるタレント,そして矢を再利用できるタレントを組み合わせたところです。回収した矢が天高く積まれました

 タレントに関する筆者の第一印象は「地味だな」という感じで,グノープ側がグッと有利になる感覚はありませんでした。しかしビルドをいろいろ試してみると,施設で行えるグノープのアップデートと組み合わせることで意図しないシナジーが生まれたりして,「おお,強っ!」となることが多々ありました。実際にはなかなかに試行錯誤を楽しめるポイントです。

なにも考えずにタレント「ゴッツンがコンボでガトリング弾を発射する」「ガトリングやライフルの球を矢にする」を選んだのですが,「アーチェリー場」でできるアップグレードで矢を全部ミサイルにしたところ,うまく組み合わさってミサイルが大量に生まれ,攻撃力が爆発しました

 さてこのプレステージですが,時間当たりのカケラ回収率のゲージは序盤こそ良いテンポで溜まるものの,ティアが上がるにつれてカケラを積むことも回収することも難しくなるため,だんだん溜まらなくなってきます。そのため,カケラを積んでティアを上げるか,いっそ一気に回収して一時的に回収率を上げることでゲージを溜めてプレステージを行うか――という判断を迫られるタイミングが訪れました。このあたりも,本作で楽しく悩めるポイントでしょう。

カケラ回収能力が高く,不要になったら破壊できるドローンで,一気かつ一時的にカケラ回収率のゲージを上げてプレステージを狙ってみたり


ビジュアル良し,音楽良しで,ボーッと楽しめる


 本作は前述のとおり,ビルドを試行錯誤して岩攻撃とカケラ回収の能力を高めたり,プレステージのタイミングを見極めたりするのが楽しい作品です。

 ただ本作の最大の見どころは,小さなグノープ達が暴れ回る姿や,だんだんエスカレートしていくド派手な画面を眺められる点でしょう。そしてBGMとして,比較的のどかな民謡やオペラの楽曲が使用されているのも面白い点です。ティアが進むと激しくなるゲーム画面とのどかな音楽とのギャップにより,独特の雰囲気を味わえるゲームとなっています。

BGMに「帰れソレントへ」「花の二重唱」といった曲が使われていました。想像よりもリラックスして遊べるゲームだと思います。画面はこんな感じになっていきますけど

 基本的にはカジュアルなクリッカーゲームなので,本作はとくに遊ぶ人を選ばないでしょう。通常価格は720円(税込)と,気軽に買えるのも嬉しい点です。興味が出たという人は,ぜひ遊んでみてください。


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